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「昨日の夜、母が救急車で運ばれて、そのまま入院になりました」——担当している方の入院の連絡は、いつも突然来ます。
でも、慌てる必要はありません。入院の連絡が来てからケアマネがやることは、実は「知る→送る→敷く→待つ」の4手に整理できるからです。
僕は独立3年目の居宅ケアマネで、要介護35件前後(要支援も含めると約60人)を一人で担当しています。入院対応で残業をしたことはありません。連携シートは入院当日に30分で送りますし、病院とのやり取りで電話の折り返し合戦に巻き込まれることも、ほぼなくなりました。
この記事では、第一報をどうやって早く受け取るかという契約時の仕込みから、当日送付の段取り、電話を使わない病院連携、そして長期入院になったときの「報酬が発生しない月」との正直な付き合い方まで、僕が実際にやっている運用を全部話します。
入院を「その日のうちに」知る仕組みは、契約の日に作っておきます
入院対応のスピードは、書類を書く速さではなく、第一報がいつ届くかでほぼ決まります。僕の場合、体感で第一報の約6割は本人・家族から、残りをサービス事業所と病院・連携室からが2割ずつ、という配分です。
ちなみに、サービス事業所からの一報が入院当日に届くのも偶然ではありません。訪問看護などのサービスを入れるとき、「気になる変化があったら、その都度連絡をください」という合意を最初に作っているからです。その連携の作り方は、こちらの記事で話しています。
▶ ケアマネと訪問看護の連携術|指示書の依頼から緊急時対応まで実文つきで解説
家族からの連絡は、電話よりLINEが多いです。夜に救急搬送があっても、家族は「夜遅くにケアマネさんに電話するのは悪い」と遠慮します。でもLINEなら、その日のうちに一報を送っておいてくれる。僕は朝にLINEをチェックして入院を把握する、という流れがいちばん多いパターンです。
ここで大事なのは、家族からの第一報は偶然ではなく、契約の日にしっかり説明をしているということです。僕は契約時に必ず「入院することになったら、僕の名前と連絡先を病院に伝えてください。ご家族からも一報ください」と話しています。
この「入院したら連絡を」は、僕が契約の日に必ず口頭で説明している5項目のひとつです。契約の日に何を、どこまで話しているか。その全部はこちらの記事にまとめました。
▶ ケアマネの契約で何を説明する?必ず口頭で話す5項目と「2時間」の中身【独立3年目の実録】
実はこれ、ケアマネの善意やテクニックではなく、運営基準に定められた義務です。指定居宅介護支援等の運営基準・第4条第4項に、サービス提供の開始に際し、あらかじめ利用者や家族に対して、入院の必要が生じた場合には担当ケアマネの氏名と連絡先を病院に伝えるよう求めなければならない、という趣旨が明記されています(2026年7月時点)。
出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号・厚生労働省 法令等データベース)(ページ内検索:伝えるよう求め)
さらに解釈通知では、日頃からケアマネの連絡先を介護保険被保険者証やお薬手帳と合わせて保管してもらうことが望ましい、とまで書かれています(出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成11年老企第22号・厚生労働省 法令等データベース)/ページ内検索:お薬手帳)。救急搬送のとき、病院が最初に開くのはお薬手帳です。そこにケアマネの連絡先が挟まっていれば、病院側からも連絡が来ます。
契約時のひと言と、日常の連絡手段を文字(LINE)に寄せておくこと。この2つで、第一報は「入院当日」に届くようになります。連絡手段を文字に寄せる考え方は、こちらの記事でも書いています。
▶ ケアマネのカスハラ、どこから我慢しなくていい?カッターを突きつけられた僕が「線引きと報告」の話をします
連携シートは、入院当日に30分で送れます
先に制度の話を整理します。利用者が入院したときにケアマネが病院へ情報提供すると、入院時情報連携加算が算定できます。2024年度の介護報酬改定で要件が短縮され、2026年7月時点では次のとおりです。
- 加算(Ⅰ)250単位/月:入院した日のうちに情報提供(入院日以前の提供を含む。営業時間終了後や営業日以外の日に入院した場合は、入院日の翌日を含む)
- 加算(Ⅱ)200単位/月:入院後3日以内に情報提供(営業時間終了後に入院し、起算3日目が営業日でない場合はその翌日を含む)

出典:令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省・PDF)(ページ内検索:入院当日中)
「当日中なんて無理でしょ」と思うかもしれません。でも、太字にした営業時間のルールを正確に知っていれば、話は変わります。夜21時に家族からLINEが来ても、翌日中に送れば(Ⅰ)が算定できるんです。つまり「朝のLINEチェックで入院を確認したら、その日中に送る」を守れば、(Ⅰ)はほぼ毎回間に合います。実際、僕はほぼ毎回(Ⅰ)で算定できています。
そのうえで、当日中に送るための段取りはこうです。
連携シート作成を、1日の中の「決まった時間」に差し込みます
僕は16時から終業までを記録の時間と決めています。入院の一報があった日は、この枠で連携シートの作成を最優先にします。「いつ書くか」を毎回考えないことが、当日送付のいちばんの土台です。
書類は「作る」ではなく「組み立てる」に変えます
連携シートは県が公表しているテンプレートを使って、パソコンで入力しています。基本情報は介護ソフトからコピペ。ADLはチェックや丸枠を動かすだけ。特記事項は直近のことなので覚えていますし、支援経過を見れば転記に迷いません。ゼロから文章を書く箇所は、実はほとんどないんです。
出先でも完結する道具を持ちます
僕はノートパソコンを持ち歩いていて、FAXはeFax(インターネットFAX)を使っています。だから訪問の合間でも、書類を作って病院へ送るところまで出先で完結します。病院への送付と同時に、サービス事業所や福祉用具など関係各所へもLINEとFAXで一斉に連絡します。
ここまでで、かかる時間は30分ほどです。当日送付は根性ではなく、テンプレ・コピペ・時間枠・道具の組み合わせで成立します。
病院への最初の電話で、「これからの電話」を終わらせておきます
MSW(医療ソーシャルワーカー)との連携は大切です。でも正直に言うと、電話のやり取りは面倒です。こちらが訪問中で出られない。折り返すと今度は相手が面談中で出られない。この行き違いは、お互いの誠意と関係なく、構造的に起きます。
だから僕は、最初の一手で電話を「終わらせる」ようにしています。家族から入院先を聞いたら、こちらから病院の連携室に電話をかけて、この順番で伝えます。
- 担当ケアマネであることと、利用者との関係性を説明する
- 連携シートを送付したい旨を伝え、FAX番号を教えてもらう
- 「今後の情報提供やご相談は、メールかFAXでお願いします。どうしても電話でお話ししたいときに僕が出られなければ、留守番電話に用件を入れてください」と伝える
同じ内容は連携シートにも記載しておきます。電話を拒否しているのではありません。「電話はつながらない前提」で連絡経路を先に設計しているだけです。文字で残る経路に乗せておけば、行き違いは起きようがないし、やり取りはそのまま記録になります。この「約束と確認を形に残す」運用の本編は、モニタリング記事に書きました。
▶ ケアマネのモニタリングは毎月20日までに終わる|60人担当の僕が「日程調整を消す仕組み」を全部話します
入院が長引いたら——報酬が発生しない月の、正直な距離感の話をします
ここからは、あまり表で語られない話です。入院が月をまたいで長引いたとき、ケアマネの動き方は変わります。理由はシンプルで、報酬が発生するかどうかが変わるからです。
月の途中で入院した場合、その月は在宅でサービスを利用した実績があるので、給付管理が発生し、居宅介護支援費も算定できます(僕の地域だと1件あたり月およそ12,000〜15,000円。要介護1・2で1,086単位、要介護3以上で1,411単位が目安です)。だからその月は、病院とも家族とも普通に連絡を取り、やることをやります。
問題は翌月です。まるまる入院していると介護保険サービスの利用がゼロになるので、給付管理が発生せず、ケアマネの報酬もゼロになります。ここ、忘れられがちですが大事なところです。ケアマネの報酬は「やり取りしただけ」では支払われません。
だから僕は、報酬が発生しない月は積極的には動きません。手抜きではなく、無報酬の期間に消耗しないための経営判断です。
とはいえ、進捗の確認はします。ただし、ここでも電話は使いません。入院1ヶ月目は病院・家族と連絡を取りますが、2ヶ月目以降は「退院の目処が立ったら病院から連絡をください」という形に切り替えて、待ちに入ります。その間の確認は、病院へはFAXの書面かメール、家族へはLINEが主です。理由はさっきと同じで、電話は行き違うからです。
ちなみに僕の契約書には「2ヶ月間、介護保険サービスの利用がなかった場合は契約終了」という趣旨の条項を入れています。ただ、ぶっちゃけると、これは形式です。実際には2ヶ月空いて退院してきた方も、空きがあれば受け入れます。条項は事業所を守るための線、実際の関係は実態で判断——この使い分けも、独立してから覚えたことです。
長期入院の着地は、経験上4つあります。在宅に復帰する。入院中に区分変更や認定更新を進めて体制を作り直す。そのまま施設に入所する。そして、病院で亡くなる。僕は全部経験しました。どの着地になるかは、ケアマネには選べません。それでも、「担当ケアマネはあなたです」と言える状態を最後まで保っておくこと。それが「待つ」という仕事だと思っています。
ただし、在宅で看取りをする場合は動き方がまったく変わります。看取りの体制づくりから、お看取り後の終結までは別の記事にしています。
▶ 在宅看取り、ケアマネは何をする?|余命1週間の連絡から、お看取り後の終結まで
このうち「入院中に区分変更を進める」については、そもそも出すか出さないかの判断基準から申請後の段取りまで、別の記事に分けて書きました。
▶ 区分変更、出す?出さない?ケアマネの判断基準|「申請するか」と「プランを動かすか」は別の話
なお、担当件数や報酬の実数の話は、こちらの記事でまとめて書いています。
▶ ケアマネの担当件数、何件が限界?60人担当している僕が「きつさの正体」を話します
当日のFAXが先回りしていると、MSWの電話は「相談」から始まります
当日送付の価値がいちばん分かるのは、数日後にMSWから最初の電話が来たときです。
あるケースでは、家族から入院の連絡を受けたその日中に連携シートを作り、病院から連絡が来る前にFAXで送っておきました。数日後、MSWから電話がかかってきて、第一声はこうでした。
「連携シートありがとうございます。いま訪問介護と手すりを使われていますね。退院後は、リハビリと入浴を目的にデイサービスを入れたほうがいいかもしれません」
最初の会話が「情報を教えてください」ではなく、「こうしませんか」という相談から始まるんです。在宅側の情報が先に届いているので、ヒアリングの往復が丸ごと省略されて、いきなり退院後の設計の話ができます。
そしてこれは、本人と家族の安心に直結します。MSWが家族に「ケアマネさんとは連携が取れていますよ」と伝えられるからです。入院直後の家族がいちばん不安なのは、病気そのものと同じくらい「退院したあとの生活がどうなるか」です。在宅チームと病院がつながっていると分かるだけで、その不安はかなり軽くなります。
僕が当日送付にこだわるのは、加算250単位のためではありません。この初速が、退院支援の質と家族の安心を作るからです。加算は、その副産物だと思っています。
まとめ:入院対応は「知る→送る→敷く→待つ」の4手で終わります
- 知る:契約時に「入院したら連絡を」と仕込む(運営基準第4条第4項の義務でもある)。日常連絡をLINEに寄せておくと、第一報は当日に届く
- 送る:連携シートは県テンプレ×介護ソフトのコピペで30分。営業時間外の入院は翌日扱いOKという要件を正確に知っていれば、加算(Ⅰ)はほぼ毎回間に合う
- 敷く:最初の電話で連携室にFAX番号を聞き、「以後はメールかFAXで。電話なら留守電に」まで伝えて、折り返し合戦を構造ごと消す
- 待つ:報酬が発生しない月は積極的に動かない。ただし担当は降りず、書面とLINEの進捗確認だけ続けて、いつ退院の連絡が来ても再開できる状態を保つ

退院の目処が立ってからの動き——退院前カンファレンスに出るかどうかの判断や、退院後のプラン再開——は、それだけで一本になる話なので、この記事に全部まとめました。
▶ ケアマネの退院対応の流れ|カンファに出ない退院は珍しくない【独立3年目の実録】
最後にひとつだけ。医療連携のしんどさは、個人のスキルよりも職場の環境で大きく変わります。訪問看護併設や病院系列の居宅なら、医療との距離は最初から近い。逆に、医療とのパイプがない職場で一人で連携を背負っているなら、それは自分の能力の問題ではありません。環境を変えるという選択肢も、手元に置いておいていいと思います。
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入院対応の土台になっている「約束を形に残す」仕組みの全体像は、こちらの記事でどうぞ。
▶ ケアマネのモニタリングは毎月20日までに終わる|60人担当の僕が「日程調整を消す仕組み」を全部話します
※本記事の制度情報は2026年7月時点のものです。加算の算定要件や運営基準は改定される場合があります。最新の情報は厚生労働省の告示・通知および保険者にご確認ください。