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ケアマネのカスハラ、どこから我慢しなくていい?カッターを突きつけられた僕が『線引きと報告』の話をします

※本記事にはアフィリエイト広告(プロモーション)が含まれています。

2026年6月、埼玉県川口市で、ケアマネジャーが担当利用者宅への訪問中に命を落とす事件が起きました。厚生労働省はその2日後に、ケアマネの安全確保を徹底するよう通知を出しています。

そして同じ2026年の10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、すべての会社の「義務」になります。

このニュースを、あなたはどんな気持ちで見ていましたか。

「明日は我が身かもしれない」と思った人も、少なくないはずです。

僕は、利用者にカッターを突きつけられたことがあります。

ケアマネ歴11年、雇われも転職も経験して、いまは独立して3年目。この記事では、あの日僕に何が起きて、報告したあと会社がどう動いたのか。そして「どこからが我慢しなくていいラインなのか」を、実体験ベースで全部話します。

いま、理不尽な要求や暴言に「これって我慢するしかないのかな」と迷っているあなたに、判断の材料を持って帰ってもらうための記事です。

どこからがカスハラ?——「我慢するかどうか」を決める3つの線

最初に、いちばん大事な話をします。

「利用者さんの要求を断るなんて、ケアマネとして冷たいんじゃないか」——そう感じてしまうあなたは、冷たくありません。介護業界全体が、長年「何でもやります」で利用者の期待値を育ててきただけです。だから断るのではなく、「自分がやる」の代わりに「一緒に調べる・できる人を紹介する」に置き換えればいい。それだけの話です。

そのうえで、僕が「我慢するかどうか」を判断してきた線は3つです。

線①:要求の中身——それはケアマネの業務範囲の中か、外か

ケアプランの相談や調整は業務の中。買い物代行や金銭の立て替え、業務と関係のない用事の依頼は業務外です。中身が業務範囲の外なら、まず「やる・やらない」ではなく「誰につなぐか」で考えます。

線②:伝え方・態度——威圧や暴言が混ざっていないか

要求の中身が正当でも、怒鳴る・脅す・物を投げるといった伝え方は別問題です。「言っていることは分かるけど、言い方が怖い」と感じたら、それはもう我慢の対象ではありません。

線③:頻度・執拗さ——繰り返しと長時間拘束

1回なら受け止められる話でも、毎日の電話、同じ要求の繰り返し、何時間も帰してもらえない拘束は、「これは異常」と感じた時点で線を越えています。

それ、我慢しなくていいかも——カスハラ3つの線 判定チャート。質問1:その要求の中身はケアマネの業務範囲の外?YESなら「やる」の代わりに「一緒に調べる・紹介する」へ、2と3もチェック。質問2:伝え方に威圧・暴言が混ざっている?YESなら我慢の対象ではありません、記録してその日のうちに報告。質問3:同じ要求の繰り返し・毎日の電話・長時間の拘束がある?YESなら線を越えています、記録してその日のうちに報告。すべてNOなら通常の相談・要望として対応

実はこの3つの線は、僕の個人的な感覚ではなくなりました。2026年10月から施行される国のルールで、カスハラは次の3つをすべて満たすものと定義されています。

  • ① 顧客等の言動であって(介護なら利用者・家族が該当します)
  • ② 社会通念上許容される範囲を超えたものにより
  • ③ 労働者の就業環境が害されるもの

「許容される範囲を超えた言動」の例として、理由のない要求・暴言・威圧的な言動・継続的で執拗な言動・長時間の拘束などが、国の資料に具体的に並んでいます。僕の3つの線と、ほぼ同じことが書いてあります。

なお、性的な冗談や身体に触れる行為などのセクハラ系の言動も、相手が利用者や家族であれば同じくハラスメントであり、我慢の対象ではありません。

ただ、介護現場にはここに難しい領域があるのも事実です。認知症の症状(脱抑制など)として出てくる性的な言動や暴言は、本人の意思による攻撃とは分けて考える必要があります。物盗られ妄想で「泥棒」と言われたとき、僕たちはそれを人格への攻撃とは受け取らず、症状として対応しますよね。あれと同じ構造です。

そのうえで、分かれ目になるのは「症状かどうか」ではありません。「あなたの就業環境が害されているかどうか」です。国の定義の3つ目の要件も、まさにそこを見ています。症状として受け止められて、あなたが害されていないなら、それはハラスメントではなく専門職としてのケアの範囲です。実際、症状として受け止められる力は専門性のひとつで、そういう人は現場で本当に頼りにされます。でも、それは持っている人の強みであって、全員に求められる義務ではありません。症状由来であっても、あなたがつらいなら我慢の対象ではない。「認知症だから仕方ない」をあなた個人の我慢で吸収するのではなく、チームで対応方針を決める話です。

出典として、厚生労働省のリーフレットを置いておきます。2ページで読めます(PDFを開いたら、Ctrl+F/command+F、スマホならページ内検索で「カスタマーハラスメント」と入れると該当箇所にすぐ飛べます)。

厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(PDF)

ちなみにこの3つの線は、トラブルが起きてから引くものではありません。僕は契約の日に、できること・できないことの線を最初に説明しています。線を先に引いておくと、揉め事の芽そのものが消えるからです。契約の日に何を、どこまで話しているかは、こちらの記事にまとめました。

ケアマネの契約で何を説明する?必ず口頭で話す5項目と「2時間」の中身【独立3年目の実録】

そして、線を引いたあとに家族から不満が返ってきたとき——カスハラとまではいかない通常のクレームに、どこまで応じるか。実際の説明トークは、こちらにまとめています。

家族からのクレームにどこまで応じるか|ケアマネが線を引くときの説明トーク実例

カッターを突きつけられた日——僕に起きたことの全記録

雇われていた頃の話です。行政も対応に苦慮していた、いわゆる困難ケースを担当していました。詳細は書けませんが、複数の機関が関わっても解決の糸口が見えない、そういうケースだったとだけ言っておきます。

最初は、小さな要求でした。

ひとつ応じると、次の要求が来る。それに応じると、また次が来る。要求は少しずつ業務範囲の外へ広がっていき、断ると態度が変わる。気づけば、事務所にはほぼ毎日、電話がかかってくるようになっていました。

時間帯は日中の業務時間内。内容は同じ要求の繰り返しと、対応への苦情。1回の電話は15分から30分になりました。僕が外に出ていれば、事務所の誰かが受けてくれる。事務所全体で状況を共有して、連携して対応してくれていましたが、電話が鳴るたびに、受けてくれるみんなに申し訳ないと思っていたのを覚えています。

そしてある日の訪問で、それは起きました。話している最中に、突然、手に持ったカッターをこちらに向けてきたんです。

不思議と、頭は冷静でした。

声のトーンを落として、話を聞き続けました。そして、こう伝えました。「脅しても、対応は変わりませんよ」。できることはできる、できないことはできない。それはカッターがあってもなくても変わらない——感情ではなく、理屈で返しました。

その場は、それで収まりました。ただ、事業所に戻る道すがら考えていたのは別のことです。毎日の電話は、みんなで受け止められていた。でも刃物は次元が違う。「これはもう、現場の連携で抱えていい話じゃない」ということでした。

その日のうちに報告した——そこから会社が動いた

僕はその日のうちに、会社に報告しました。

ここからの流れを、順番に書きます。あなたの職場で同じことが起きたとき、「報告したらどうなるのか」のイメージを持ってほしいからです。

  • ① 代表に報告:事実をそのまま伝えました。要求の経緯、毎日の電話、そしてカッターのこと
  • ② 会社が地域包括支援センターと連携:僕ひとりの問題ではなく、事業所と関係機関のケースとして扱いが変わりました
  • ③ 複数名対応に切り替え:一人で訪問しない体制になりました
  • ④ 最終的に担当の引き継ぎ:僕はこのケースから離れました

正直に言うと、あのとき一番怖かったのは、カッターそのものではありません。「このケースを、いつか他のケアマネが引き継がなくちゃいけない」ことでした。

僕が黙って我慢を続けていたら、何も知らない次の担当者が、同じ部屋に一人で入ることになります。それに、もし僕の身に何かあれば、その影響は僕ひとりでは済みません。会社にも、関わっている関係機関にも及びます。報告は、自分を守るためだけの行動ではないんです。利用者への支援を続けるためであり、事業所と、次にそのケースに関わる誰かを守るための行動です。

だから、報告するときは「愚痴」ではなく「記録」で伝えてください。いつ・どこで・何を言われ、何をされたか。支援経過に事実を残しておくと、会社も包括も動きやすくなります。

ちなみに僕は雇われ時代、管理者として苦情・事故の窓口をやっていた側でもあります。窓口側から見ても、記録のある報告ほど動きやすいものはありませんでした。管理者側から見た景色はこちらの記事に書いています。

ケアマネと管理者の兼務はきつい?フル担当のまま管理者をやった僕の本音

2026年10月、カスハラは「あなたの我慢」から「会社の義務」になる

僕のケースでは、会社が動いてくれました。でも「報告したのに何も変わらなかった」という職場があるのも、知っています。

ここで、冒頭の法改正の話に戻ります。

2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスハラ対策がすべての事業主の義務になります。労働者を1人でも雇っていれば対象で、中小の事業所にも例外はありません。介護事業所も、もちろん含まれます。

会社に義務づけられる措置には、たとえばこんな内容があります(2026年2月に国の指針で具体化されました)。

  • カスハラには毅然と対応し、働く人を守るという方針を明確にして周知する
  • 可能な限り、労働者を一人で対応させない。犯罪になり得る言動は警察へ通報する、といった対処をあらかじめ決めておく
  • 相談窓口を決めて周知する
  • 被害が起きたら、事実確認・被害者への配慮・再発防止を行う
  • 相談したことを理由に、不利益な扱いをしてはいけない

「一人で対応させない」「相談しても不利益にしない」。僕の会社があのとき自主的にやってくれたことが、これからは全事業所の義務になる、ということです。

川口市の事件についても触れておきます。あの事件を「カスハラの延長」と結びつけて語ることは、僕はしません。カスハラと暴力は別物ですし、経緯の全体像は分かっていないからです。ただ、訪問の仕事が一人で相手の生活空間に入る構造を持っている、という点だけは同じです。厚生労働省も事件直後の通知で「ハラスメント対応を職員個人に任せず、組織で対応すること」を強調し、複数人での訪問にかかる費用を国が支援する事業も打ち出しました。

つまり、国の方向ははっきりしています。「現場の我慢」で吸収させる時代は終わり、「組織の体制」で受け止める時代に変わる。あなたが報告をためらう理由は、制度の側から消されつつあります。

逆に言えば、2026年10月以降、「報告しても動かない職場」は法律の面でも問題を抱えることになります。もしあなたの職場がそちら側なら、我慢の続け方ではなく、環境の変え方を考えるタイミングかもしれません。「辞めたい」の正体を切り分ける話は、この記事に書きました。

ケアマネを辞めたい?僕が辞めたかったのは「ケアマネ」ではなく「職場」だった

一人ケアマネに、守ってくれる会社はない——それでも僕が不安じゃない理由

ここまで読んで、独立を考えている人は気づいたかもしれません。

この法律が守るのは「雇用される労働者」です。僕のように独立して、誰も雇わずに一人でやっているケアマネは、守られる労働者でもなければ、義務を負って体制を作ってくれる会社もない。法の網の外側にいるんです。

雇われているうちは、会社と法律が盾になってくれる。独立したら、盾は自分で作るしかない。

じゃあ僕は今、カスハラへの備えとして何か特別なことを決めているのか。正直に言うと、明文化したルールは作っていませんでした。「対応できる」という感覚があったからです。ただ、この記事を書くにあたって「その自信の正体は何なのか」を分解してみたら、4つ揃っていました。

  • ① 場数:カッターの一件を含めて、雇われ時代に重いケースを経験して、対応の引き出しができていた
  • ② 線引き:ケアマネの業務範囲を制度上把握しているから、「なぜそれはできないのか」を感情ではなく理屈で説明できる
  • ③ 出口:包括・保険者・警察・担当の引き継ぎという、外につながるルートを知っている
  • ④ 決裁:独立した今は、対応方針も、最終手段としての契約解除も、自分で即決できる

一人ケアマネの盾は自分で作る——4層の備え。第1層 場数:重いケースの経験が対応の引き出しになる。第2層 線引き:業務範囲を制度で把握し理屈で説明できる。第3層 出口:包括・保険者・警察・引き継ぎの外部ルートを知っている。第4層 決裁:対応方針も契約解除も自分で即決できる。1から3は雇われている間に貯められる

誤解しないでほしいのは、「備えなんてなくても大丈夫」という話ではまったくない、ということです。むしろ逆で、この4つが揃っていない状態での独立は、危ないと僕は思います。

そして④以外の3つは、全部、雇われている間にしか安全に貯められません。会社という盾の内側で場数を踏み、線引きを学び、出口のルートを知る。独立を視野に入れている人ほど、いまの職場での経験を「盾の材料集め」だと思って積んでください。

まとめ:介護保険で支えられない人がいる。それはあなたのせいじゃない

最後に、いちばん伝えたいことを書きます。

介護保険は万能ではありません。制度の枠では支えきれない人、複数の機関が関わっても解決できないケースは、現実に存在します。そういうケースに向き合って消耗しているとき、僕たちは「自分の力量が足りないからだ」と考えがちです。

違います。制度で支えられない人がいるのは、制度の限界であって、あなたの限界ではありません。

この記事の要点をまとめます。

  • 我慢するかどうかは3つの線で決める——要求の中身・伝え方・頻度。2026年10月からは、国の定義でも線が引かれる
  • 線を越えたら、記録して、その日のうちに報告する。報告は自分と利用者と、次の担当者を守る行動
  • カスハラ対応は「あなたの我慢」から「会社の義務」に変わる。報告して動く職場が、これからの標準になる
  • 独立したら盾は自分で作る。場数・線引き・出口・決裁の4つは、雇われのうちに貯める

そして、もしあなたの職場が「報告しても動かない」側なら——守られない場所で我慢し続けることは、備えではありません。守ってくれる職場に移ることも、立派な備えのひとつです。どんな事業所が組織として対応してくれるのかは、外から求人票を眺めているだけでは分かりません。転職エージェントに「ハラスメント対応の体制」を質問してみるのは、その職場の姿勢を測るリトマス紙になります。

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転職サイトとの付き合い方そのものは、こちらの記事で詳しく話しています。

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あなたの我慢の上に成り立つケアマネジメントは、長くは続きません。線を引いて、記録して、報告する。それがいちばん、利用者のためにもなります^^

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