実務・ノウハウ系

ケアマネの担当変更、申し出は直接来ない|包括から電話が来たときの動き方と、引き留めない理由

※本記事にはプロモーションが含まれます。

「ケアマネを変えてほしいと言われたら、どうすればいいのか」。この記事にたどり着いた方は、いま実際に交代の話が動いているか、もしそうなったらどうしたらいいのかと怯えているか、そのどちらかだと思います。

先に、現実をひとつお伝えします。担当変更の申し出の多くは、本人や家族から直接は来ません。少なくとも僕は、独立前も含めて一度も直接言われたことがなく、連絡はいつも地域包括支援センターか、サービス事業所経由でした。

この記事では、独立3年目・約60人を担当している僕が、交代の申し出をどう知り、どう受け止め、どう渡してきたかを書きます。引き留め方は書きません。僕は引き留めないと決めているからです。その理由も含めて、順に説明します。

担当変更の申し出は、ケアマネには直接来ない

利用者や家族が「ケアマネを変えたい」と思ったとき、最初に連絡する先は担当ケアマネ本人ではありません。地域包括支援センターです。

考えてみれば自然なことです。毎月自宅に来る相手に、面と向かって「あなたを替えたい」とは言いにくい。しかも介護サービスは今日も明日も続いていて、関係を切った瞬間に生活が困る。だから利用者側は、角が立たない外のルートを選びます。包括は地域の相談窓口として最初にケアマネを紹介した立場でもあるので、相談がしやすいんです。

つまりケアマネ側から見ると、交代の話は「ある日、包括からの電話で知る」形でやってきます。担当ケアマネはいつもどおり穏やかに応対していたのに、裏では話が進んでいた。この時間差が、交代をきつく感じさせる正体だと僕は思っています。

だからこそ、最初に知っておいてほしいのは「直接言われなかったこと」自体は、あなたへの攻撃ではないということです。制度の構造上、話はそういう経路で流れます。ここを恨みに変えないことが、このあとの動きをこじらせない第一歩になります。

申し出を知ったとき、最初にやること

包括から連絡が来たら、最初にやることは2つです。事実の確認と、記録です。

事実の確認とは、誰からの申し出で、理由として何が伝わっているかを包括に聞くことです。ここで大事なのは、聞く目的を「反論の材料集め」にしないこと。あとで説明しますが、僕は引き留めをしないので、理由を聞くのは反論のためではなく、自分の仕事の振り返りと、次のケアマネへ引き継ぐ情報の整理のためです。

記録は、支援経過に「いつ・誰から・どういう連絡があったか」を淡々と残します。交代の局面は、あとから経緯を問われる可能性が通常より高い場面です。感情は書かず、事実だけを書きます。

なお、交代の申し出の前段には、たいていクレームや要望の局面があります。そちらの対応と記録の残し方は、この記事の前編にあたる別記事にまとめています。

家族からのクレームにどこまで応じるか|ケアマネが線を引くときの説明トーク実例

交代を引き留めない——ケアマネを選ぶ権利は利用者にあるから

交代の連絡を受けたとき、僕は引き留めをしません。謝罪して関係をやり直させてもらう、という選択肢も取りません。

冷たく、開き直りのように聞こえるかもしれませんが、理由は単純で、引き止める権利がそもそもこちらにないからです。介護保険のサービスは、利用者の選択に基づいて提供されることが法律の理念として明記されています。どの事業所の、どのケアマネに支援を頼むかは利用者が決めることであって、ケアマネ側が「続けさせてほしい」と交渉する筋合いのものではありません。

それに、実際問題として、包括まで話が届いた時点で利用者側の気持ちは決まっています。そこから説得で信頼を巻き戻すのは至難の業です。仮に引き留めに成功したとしても、「言ったのに変えてもらえなかった」という状態で続く関係が、本人にとっていい支援につながるとは思えないんです。

だから僕の返事は決まっています。「わかりました。次の方が決まるまでに必要なことを教えてください」。ここから先は、気持ちの問題ではなく段取りの問題です。

出典:介護保険法(平成9年法律第123号)第2条第3項

こじらせずに引き継ぐ手順——判断のポイントだけ

引き継ぎ方の細かい手続きは、状況によって変わります。ここでは、こじれるかどうかの分かれ目になるポイントだけに絞ります。

後任が決まるまで、支援は止めない

交代の話が出ても、契約が終わるまでの担当はこちらです。モニタリングも給付管理も通常どおり続けます。「どうせ替わるから」と記録や訪問の手を抜いた期間があると、そこが後任や包括から見えたときに、交代理由を事後的に裏付けることになってしまいます。最後の1ヶ月こそ、普段どおりに。

包括とは、事実ベースで淡々と

包括の担当者は板挟みの立場です。ここで「自分は悪くない」という弁明を長々とやると、包括の中でのあなたの印象がかえって下がります。伝えるのは、引き継ぎに必要な情報と、終了時期の相談だけ。それで十分に伝わります。

後任への引き継ぎは、書類で伝わる形に

交代のケースでは、前任と後任が顔を合わせないまま引き継ぐことも珍しくありません。だからこそ、支援経過を「読めば分かる」状態にしておくことが前任の最後の仕事になります。書き方の考え方は、引き継ぎの記事に詳しくまとめています。

ひとつ、前任の側からも確認しておきたいのが、後任側が保険者に出す「居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書」の適用日です。引き継ぎの作業をした月を、そのまま適用日にして申請してしまう事業所をときどき見かけます。正しくは、後任のケアマネが給付管理を行う月に合わせます。ここがずれると、その月の給付管理がどちらの事業所のものか割れてしまうので、終了月と適用日の認識を後任・包括と揃えておくと安全です。

ケアマネの引き継ぎ手順|転職2ヶ月で35件引き継いだ僕が「書類より大切」と思うこと

僕が自分から「他の事業所へ」を提案した話

逆のパターンも一度だけあります。僕の側から、包括に「継続できかねます」と伝えたケースです。

担当していた要介護2の方の更新認定で、認定調査に僕が立ち会いました。結果は要支援2。介護度が下がったことについて、ご家族から「あなたが立ち会ったのに、あなたのせいだ」と強く責められました。

ケアマネが認定調査に立ち会うことは、要介護の結果を保証するものではありません。認定は、調査員の調査と主治医意見書をもとに、介護認定審査会が決めるものです。立ち会いの役割は、普段の様子が調査の場で正しく伝わるよう補足すること。そこを丁寧に説明しました。それでも批判は続きました。

このとき僕が考えたのは、「この信頼関係のまま支援を続けることが、本人のためになるか」でした。ならない、というのが答えです。説明を尽くしても届かない関係で、これから先の提案を聞き入れてもらえるとは思えない。それで担当地区の包括に経緯を説明し、要介護2の認定期間の満了をもって契約を終了させてもらいました。

前のセクションで「引き留めない」と書いたのと、これは同じ判断軸です。選ぶ権利が利用者にあるのと同じように、信頼関係が成り立たなくなったときに終了を申し出ることは、事業所側にもできます。契約書と重要事項説明書に解約の定めを入れてあるのは、こういう場面のためです。感情で切るのではなく、「この関係で支援の質を保てるか」で判断する。それが僕の線です。

交代1件で、収入はいくら減るのか

独立している方、これから独立する方のために、お金の話もしておきます。

居宅介護支援費は、3級地の代表値でざっくり言うと、要介護1〜2で月12,000円前後、要介護3以上で月15,000円前後です。交代で1件離れると、要介護2の方なら月12,000円、年間で約14万円の減収になります。

数字にすると小さくない。ただ、担当が60件あれば、1件は全体の2%弱です。僕はこの数字を「1件も失えない」と読むのではなく、「1件の交代で経営は揺らがない。だから引き留める理由にお金を持ち込まなくていい」と読んでいます。引き留めない、という判断を支えているのは、実はこの余白でもあります。

一人ケアマネにとって気になるのは、金額よりも紹介元との関係のほうだと思います。僕の場合、新規のほとんどが包括からの紹介です。交代が包括経由で処理されるということは、交代の事実は必ず紹介元に知られる、ということでもあります。

だからこそ、前のセクションで書いた「包括とは事実ベースで淡々と」が効いてきます。交代そのものより、交代のときの振る舞いのほうが、次の紹介につながるかどうかを決めていると僕は考えています。

交代を「自分への評価」とどう受け止めるか

最後に、いちばん引きずりやすいところの話をします。交代されたという事実を、自分の能力の否定として受け取るかどうか、です。

僕が経験した中でいちばん多かった交代理由は、「女性のケアマネに変えてほしい」でした。介護の話には、体のこと、お金のこと、家族の中のことが含まれます。同性のほうが話しやすい、という希望はごく自然なもので、こちらの仕事ぶりとは関係がありません。男性である僕には、どうやっても応えられない希望です。

もちろん、対応への不満が理由の交代もあります。そのときは振り返って、直せるところは次に活かせばいい。ただ、全部の交代を自分の失点として数えはじめると、この仕事は続けられなくなります。同じ対応をしていても、とても感謝してくれる方もいれば、合わないと感じる方もいる。60人いれば60通りの相性があって、そのうちの1つが合わなかった。それ以上でも以下でもない交代が、実際には大半です。

交代の連絡は、いつも静かに、包括からの電話でやってきます。そのとき慌てず、恨まず、普段どおりの仕事で最後まで渡し切る。それができれば、交代はキャリアの傷ではなく、ただの1件の終結です。

まとめ

  • 担当変更の申し出は本人からは来ない。包括・事業所経由で知るのが通常の経路
  • 最初にやるのは事実確認と記録。反論の材料集めはしない
  • 引き留めはしない。ケアマネを選ぶ権利は利用者にある(介護保険法第2条第3項)
  • 最後の1ヶ月こそ普段どおりに支援し、包括には事実だけを淡々と伝える
  • 信頼関係が成り立たないときは、事業所側から終了を申し出る判断もある
  • 交代1件は月12,000円前後の減収。ただし引き留める理由にお金を持ち込まない
  • 交代の大半は相性。全部を自分の失点として数えない

実務の全体像は、こちらの記事から各テーマに入れます。

新人ケアマネの業務マニュアル|「何から覚える?」に実務記事10本の地図で答えます

ところで、交代のたびに深く落ち込んでしまうとしたら、それは交代そのものより、相談できる相手が職場にいないことが原因かもしれません。一人で受け止める環境と、案件ごとに相談できる環境では、同じ出来事の重さがまったく違います。働く場所を見直すことも、選択肢のひとつです。

レバウェル介護に無料で相談してみる

※レバウェル介護の対応エリアは北海道・宮城・東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・静岡・大阪・京都・奈良・兵庫・広島・福岡です(派遣はエリア内からの応募のみ対象)。

-実務・ノウハウ系