働き方のリアル

在宅看取り、ケアマネは何をする?|余命1週間の連絡から、お看取り後の終結まで

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「余命は、1週間くらいだと思います」

在宅看取りは、こういう電話から突然始まります。入院先からの新規の相談で、がんの末期。ご本人とご家族の希望は「最期は家で」。ここからケアマネに与えられる時間は、数日しかありません。

僕は独立3年目の現役ケアマネで、要介護35件前後(要支援も含めると約60人)を担当しています。それだけ担当していても、看取りは年に1件あるかないか。つまりケアマネにとって看取りは「数をこなして慣れる仕事」ではなく、毎回、初めてに近い気持ちで向き合う仕事です。

この記事では、実際にあった「余命1週間の連絡」からお看取り後の終結までを時系列でたどりながら、体制づくりの段取り、看取り期のケアマネの役割、ターミナルケアマネジメント加算を僕が算定しない理由、訃報の受け方から支援経過の閉じ方までを解説します。

在宅看取りは、突然始まる|余命1週間からの5日間

冒頭の相談があったケースで、僕が動ける時間は退院までの1〜2日でした。その間にやったことは、3つの事業者を同時に動かすことです。

  • 訪問診療:かかりつけ医が対応してくれることになり、ご家族への病状説明もお願いできました
  • 訪問看護:初回訪問を訪問診療に同席する形で調整しました
  • 福祉用具:相談があったその日のうちに介護ベッドを設置してもらいました

退院して、ご本人は5日後に自宅で亡くなられました。短い時間でしたが、「家で死にたい」という希望は叶えてあげることができました。

時間との勝負になる理由は単純で、順番に依頼していたら間に合わないからです。「訪問診療が決まってから訪問看護に連絡して、それからベッドの手配」とやっていたら、退院に体制が間に合いません。だから同時に声をかけます。

在宅看取りの時系列図解:余命1週間の相談から3事業者の同時調整、退院、お看取り、訃報の連絡、終結までの6ステップ

なお、入院中の病院とのやり取りや情報連携の基本は、こちらの記事にまとめています。

利用者が入院したらケアマネは何をする?連携シートを「当日30分」で送る僕の段取りを全部話します

体制づくりの段取り|3つの事業者を「同時に」動かす

同時に動かすときに決めておくことが、ひとつだけあります。連絡の窓口をどうするかです。

原則は、ケアマネが窓口です。情報がバラバラに流れると、ご家族が同じ説明を何度もすることになりますし、事業者間の認識もずれます。

ただし、先程の看取りのようにスピードを優先する局面では、あえて窓口を分散させます。訪問診療・訪問看護・福祉用具のそれぞれが、入院先やご家族と直接連絡を取る形です。このときは必ず、ご家族に「各事業者から直接連絡が入ります」と事前に説明しておきます。説明さえしておけば、ご家族は混乱しません。

この進め方ができるかどうかは、事業所選びで決まります。僕の基準はシンプルで、信用できる事業所とは、コミュニケーションが取りやすい事業所です。加えて看取りでは、スタッフの人数が多くて連絡がつながりやすいところも考慮します。正直に言えば、初めて組む事業所に看取りをお願いするのは不安です。だから普段のケースで「連絡の取りやすさ」を見ておくことが、そのまま看取りの備えになります。

訪問看護への依頼の仕方や指示書まわりの基本は、こちらで実文つきで解説しています。

ケアマネと訪問看護の連携術|指示書の依頼から緊急時対応まで実文つきで解説

看取り期の役割の実際|僕は頻回訪問をしない

看取り期に入ったら、ケアマネが毎日のように訪問して様子を見る——そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。でも、僕はしません。

理由は、役割が違うからです。看取り期の指揮を執るのは訪問診療の医師です。病状の変化に対応するのは訪問看護です。医療の判断が必要な場面で、ケアマネが現場にいてもできることはありません。現場に行く必要がないから、行かない。これが僕の看取り支援の軸です。

では何もしないのかというと、そうではありません。ケースによっては、訪問介護の回数と時間が変わるたびの単位数の計算、そしてエアマットへの交換の手配などです。とても地味ですよね。でも、ご本人の身体とご家族の介護負担を支えているのは実際に訪問しているサービス事業所の方たちです。医療は訪問診療と訪問看護が支える。生活とお金まわりの調整は訪問介護とケアマネが支える。この分担がはっきりしていれば、ケアマネが頻回に通う必要は生まれません。

サービス調整の判断|フルコースを組んで、あとは微調整

看取り期のサービスは、あとから細かく調整する可能性が十分にあります。だからこそ、訪問診療・訪問看護・訪問介護・福祉用具と、想定される支援を最初からフルコースで位置づけておいて、「実際にどこまで使うか」は現場からの相談で調整する。この順番です。

状態が日ごとに変わる時期に、変わるたびに担当者会議を開いてプランを組み直していたら、間に合いません。だから最初に組み切って、訪問介護には「回数や時間が増えたり減ったりする可能性があります」と事前に承諾を取っておきます。そうすれば、現場は相談ひとつで動けます。

また、状態が大きく変わる時期は、要介護度が実態と合わなくなる時期でもあります。区分変更を出すかどうかの判断の考え方は、こちらの記事がそのまま使えます。

区分変更、出す?出さない?ケアマネの判断基準|「申請するか」と「プランを動かすか」は別の話

ターミナルケアマネジメント加算を、僕が算定しない理由

看取りの話をすると必ず出てくるのが、ターミナルケアマネジメント加算です。まず要件を整理します。

  • 単位数は400単位(利用者1人につき1回・1事業所に限る)
  • 2024年度の改定で対象が「末期の悪性腫瘍」限定ではなくなり、医師が回復の見込みがないと診断した在宅で亡くなった方に広がりました
  • 本人・家族の同意と、終末期の医療・ケアの方針に関する意向の把握
  • 24時間連絡できる体制の確保
  • 死亡日および死亡日前14日以内に2日以上、利用者の居宅を訪問して心身の状況を記録し、主治医とサービス事業者に連絡調整すること

出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」

僕は、この加算を算定していません。理由は「取らない主義」だからではなく、僕の動き方だと、要件になっている訪問がそもそも発生しないからです。ここまで書いてきたとおり、看取り期の指揮は訪問診療医、頻回の対応は訪問看護です。ケアマネの訪問が実務として必要にならないのに、加算のために訪問を作るのは順番が逆だと考えています。

仮に、加算のために訪問を2回作ったらどうなるか。数字にしてみます。加算は400単位。3級地の地域単価は11.05円なので、収入は約4,420円です。一方、訪問1回にかかる時間を移動込みで1〜1.5時間、ケアマネの人件費を時給2,000円で見積もると、2回で4,000〜6,000円。つまり、トントンか赤字です。しかもこの時給2,000円は控えめな数字で、ケアマネの平均給与から逆算すると実態は2,300円前後になりますから、赤字側に寄ります。

公平のために2点補足します。ひとつ、この計算は「追加の訪問2回分のコストだけ」を切り出した比較です。400単位には24時間の連絡体制や連絡調整の評価も含まれているので、加算全体の価値を否定するものではありません。ふたつ、看取りを数多く支援している事業所には、特定事業所医療介護連携加算という別の評価の道があります(2024年度改定で、ターミナルケアマネジメント加算の算定回数要件が年5回から年15回に引き上げられました)。看取りが年1件の僕の事業所と、看取りを強みにしている事業所では、前提がまったく違います。

誤解してほしくないのですが、順番はこうです。赤字だから算定しないのではありません。必要のない訪問はしないという動き方の結果として、算定していないのです。

もうひとつ、看取りの請求で悩みやすいのが「亡くなった月にサービスの利用実績がない場合、居宅介護支援費は請求できるのか」という論点です。原則としては、サービス実績のない月の居宅介護支援費は算定できないと僕は整理しています。ただ実際の看取りでは、ほとんどのケースで介護ベッドを使っています。月をまたいでも死亡月に福祉用具貸与の実績があるので、死亡確認の際の電話でのモニタリング(後述する「特段の事情」)を支援経過に記録すれば、通常どおりの請求になる——これが僕の整理です。ベッドを使っていないまま月をまたぐケースは僕自身経験がないので、そうなりそうなときは前もって保険者に確認することをおすすめします。

訃報の連絡から終結まで|支援経過の閉じ方

訃報は、ご家族か訪問看護から入ることが多いです。ご家族から電話をいただいたとき、僕はだいたいこういう流れで話しています。

「このたびは、ご愁傷さまでした。◯◯さん、ご自宅で過ごせてよかったです。……あらためて、利用されていたサービスの終了のご連絡など、事務的なお話を後日させていただきます。今日までのご家族の介護、本当におつかれさまでした」

お悔やみを最初に、事務連絡は「後日します」という予告だけにとどめて、最後にご家族をねぎらう。この順番だけ決めています。訃報の電話で契約終了の手続きの話を始めない、ということです。

モニタリングは「特段の事情」で整理する

月の途中で亡くなられると、その月の訪問でのモニタリングができていないことがあります。運営基準では、モニタリングは特段の事情のない限り月1回は利用者の居宅を訪問して面接することとされていて、利用者側の事情で訪問・面接ができない場合が「特段の事情」にあたります。ご逝去はまさにこれです。僕は、死亡確認のご連絡をいただいた電話でご家族から状況をうかがい、それをモニタリングとして「特段の事情」の理由とあわせて支援経過に記録しています。

もうひとつ、予後の見通しを主治医から聞けたときは、モニタリング予定を前倒しにして、その予定自体を支援経過に書いておきます。実際にあった流れでは、月の初めに担当者会議を開いて主治医から予後を確認し、5日後に訪問する予定をご家族に伝えました。ご本人はその3日後に亡くなられました。訪問は実現しませんでしたが、「予後を踏まえて早めの訪問を予定していた」という記録が残っていることが、支援の実態を示してくれます。

出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」

実績の確定は事業所任せでいい。ただし福祉用具だけは見る

亡くなった月のサービス実績の確定は、基本的に各事業所からの報告どおりで問題ありません。ただ、福祉用具だけは請求の区切りを確認します。福祉用具貸与の請求は、半月単位(1日〜15日、16日〜月末)で区切られるのが一般的です。そして、その月に初めて借りた商品は、1〜15日の利用でもひと月分の請求になります。この仕組みを知らないと、亡くなった日と請求額のつじつまが合っていないように見えて慌てます。ご家族の負担に直結するところなので、亡くなった日・借り始めた日と請求期間だけは突き合わせます。

終結の型|支援経過に【終了】と書く

最後は支援経過の閉じ方です。僕は、ご家族からの連絡を受けたら、サポートの終了についてご説明して了承をいただき、関係各所へ報告したうえで、支援経過に【終了】と見出しを立てて記録します。見出しがあるだけで、あとから記録を見返すときに「このケースはここで終了した」ということが一目でわかります。

香典と弔問は、しない

僕は、お香典もご弔問もしていません。ケアマネとご利用者の関係は、介護保険サービスにかかるケアマネジメントの契約です。ご逝去とともに契約は終わっていて、そこから先は報酬が発生していない時間です。線を引かないと、際限がなくなってしまいます。一度だけ、どうしてもと思ってお伺いしたことがありますが、それでもいまは、この線引きに戻りました。ここは考え方が分かれるところだと思いますし、伺うケアマネさんを否定する気持ちはまったくありません。あくまで僕の運用です。

まとめ|看取りは「行かない勇気」と「閉じる型」

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 在宅看取りは突然始まる。訪問診療・訪問看護・福祉用具を同時に動かす
  • 窓口は原則ケアマネ。スピード優先のときだけ、家族に説明したうえで分散させる
  • 指揮は訪問診療医、対応は訪問看護。現場に行く必要がないのに行かない
  • サービスはフルコースで先に組み、現場からの相談で調整する
  • ターミナルケアマネジメント加算は、動き方の結果として算定していない
  • 訃報の電話はお悔やみ→事務連絡の予告→ねぎらいの順。モニタリングは「特段の事情」で記録し、支援経過は【終了】で閉じる

初めての看取りを前に不安な方、とくに新人ケアマネの方は、まずこちらの記事で日々の業務の型を固めておくと、イレギュラーに向き合う余裕が生まれます。

新人ケアマネが「何もわからない」のは当たり前|着信音に怯えていた僕が教える最初のひと月の型

そして、看取りに正面から取り組みたいのに、いまの職場では件数に追われてそれどころではない——そういう方は、働く環境を変えることも選択肢のひとつです。

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