働き方のリアル

ケアマネのシャドーワーク、雇われ時代は全部やった|独立してからは断って、つなぐことに徹している

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2024年12月に、厚労省の検討会がケアマネの業務を4つに分けました。それを受けて、いくつかの市が「ケアマネにはできないこと」を書いたリーフレットを利用者向けに出しています。金銭管理、通院の送迎、身元保証人。読んで思ったのは、「これ、雇われていたころは全部やっていた」でした。

ケアマネ歴11年、独立4年目のつなぐです。訪問介護併設と訪問看護併設の事業所で雇われケアマネをやって、2023年に一人で居宅を立ち上げました。この記事では、リーフレットに「できない」と書かれている仕事を、雇われ時代にどこまで引き受けていたか、独立してからなぜ断るようになったか、そして今どう断っているかを書きます。

断れなかった話ではありません。断る発想がなかった話と、断るしかなくなった話です。

雇われ時代は全部やった。独立した今は断っている

結論を先に書きます。リーフレットに並んでいる「できないこと」のうち、金銭管理と通院同行は雇われ時代に引き受けていました。保証人だけは一度もありません。独立してからは、介護保険制度の外にある手続きは基本的に断っています。

雇われ時代と独立後で、僕の覚悟や責任感が変わったわけではありません。変わったのは前提です。雇われていたころは、会社が引き受ける前提で回っていたので、断るという発想がそもそもありませんでした。勤務時間内なら給与も出ていました。一人になると、同じ仕事をしても報酬はゼロで、止める人もいなくて、うまくいかなかったときに背負うのは自分だけです。やっていることは同じでも、雇われているときと一人のときでは、引き受けるかどうかの答えが変わりました。

その変化を順に書きます。まず、行政が線を引き始めた話からです。

行政が線を引き始めた。市が「できないこと」を紙にした

2024年12月12日、厚労省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」が中間整理を出しました。居宅介護支援事業所でケアマネが実際にやっている仕事を、国が初めて4つに分けた文書です。

  • ①法定業務(相談対応・連絡調整・ケアプラン作成)
  • ②保険外サービスとして対応しうる業務(郵便物の発送や受取・代筆代読・救急搬送時の同乗など)
  • ③他機関につなぐべき業務(預貯金の引き出しや振込・財産管理・死後事務など)
  • ④対応困難な業務(医療同意)

出典:厚生労働省「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 中間整理」(ページ内検索:別添)

この文書には「いわゆるシャドウワーク」という言葉がそのまま出てきます。僕らが現場で使っていた言い方が、国の文書に載りました。

そして、この中間整理を受けて、市が動きました。僕が実物を確認できたのは3つです。

3つとも、市の課と地域のケアマネの職能団体が一緒に作っています。ケアマネが勝手に「できません」と言っている紙ではなく、行政の名前が入った紙です。

中身を見ると、「できないこと」の欄に金銭管理・財産管理、通院や入院時の送迎、身元保証人、医療同意、死後の事務が並んでいます。三鷹市のリーフレットには「本来の業務には、ケアマネジャーに介護報酬が支払われています」という一文があります。報酬が出ている仕事と出ていない仕事がある、という説明を、利用者向けの紙が先にしてくれています。

ただし、広島市の案内ページには「リーフレットの利用は必須ではなく、本来業務範囲外の業務を禁止するものではありません」と書いてあります。禁止ではなく、説明の道具です。ここは後で書く「使い方」に関わるので覚えておいてください。

僕の市には、2026年8月の時点で、この種のリーフレットはまだありません。出れば心強いとは思いますが、不満はありません。理由は最後に書きます。

雇われ時代に引き受けた3件。共通点は「会社が引き受ける前提だった」

リーフレットの「できないこと」を、雇われていたころの自分に当てはめてみます。

金銭管理:後見人がつくまでの期間限定で、預貯金の引き出しまで

家族からのネグレクトがあった利用者でした。お金の管理をする人がいない状態で、上司に報告したところ、「包括も絡むならOK」という条件つきで承認が出ました。包括と協議して、後見人がつくまでの期間限定で、預貯金の引き出しまで引き受けました。

今の僕なら、この件は最初から包括と市に持っていきます。当時は上司と包括が了解している、期間も決まっている、という条件が揃っていたので、迷いませんでした。

独立後にお金に一人で関わらないと決めた話は、生活保護の記事に書いています。

▶ 生活保護の利用者、ケアマネはどこまでやるのか|引き受けたこと・断ったこと・断ったあとに渡した先

通院同行:上司には相談せず、自分の判断でやっていた

通院同行は、上司に相談したことがありません。事業所として容認する方針で、30分から1時間程度なら各ケアマネの裁量でした。だから誰も「これはやるべきか」と考えていなかったと思います。僕もそうでした。

独立してから通院同行をしていない理由は、通院時情報連携加算の記事に書いています。

▶ 通院時情報連携加算を5年取っていない理由|算定率0.5%は、連携していない証拠じゃない

救急搬送の付き添い:手術待ちで3〜4時間

生活保護で身寄りのない利用者が救急搬送され、手術が終わるまで3〜4時間、病院で待ちました。勤務中だったので給与は出ています。加算はありません。

この利用者はもともと上司が担当していたケースで、事情も家族状況も上司が把握していました。つまり事業所として、こういう展開になったらケアマネが動くことは想定の中にありました。

3件に共通していたこと

3件とも「断れなかった」のではありません。会社が引き受ける前提で回っていたので、断るという選択肢が頭に浮かばなかった、が正確です。上司の承認があり、方針があり、勤務時間内なら給与が出ていました。断る必要がなかった、と言ってもいいと思います。

独立して一度だけやった。入院の申し込みと支払いを無報酬で

独立してから、ケアマネがやらなくてもいいのにやったのは一度だけです。個人が特定されないように、経緯はぼかして書きます。

身寄りのない利用者でした。同業の紹介で専門職がつく段取りになっていて、経緯の説明、自宅への訪問、サポート内容の確認まで済んだ直後に、本人が急変しました。救急搬送の判断はその専門職がしたのですが、入院した後で僕に連絡が来て、その専門職は対応しないことになりました。

結果として、入院の申し込みと入院費の支払いを、僕が無報酬でやりました。保証人と手術の同意書は書いていません。専門職がつく話だったので、この時点で包括には相談していませんでした。

なぜやったか。身寄りのない人を受け入れてくれた病院に申し訳なかった、というのが一番大きい理由です。人としての責任、と言ってもいい。経営としては完全に赤字です。ただ、この件は「教訓として持っておく失敗事例」に捉え方を変えました。

この一件で痛感したのは、身寄りのない人の支援は、最初から包括と行政の協力を仰ぐべきだったということです。専門職がつくからと安心して、包括に相談しなかった。専門職が対応しなくなった時点で、代わりに動く人が誰もいなくなり、自分がやるしかなくなりました。

一人になって変わったのは前提。だから介護保険の外の手続きは断る

雇われ時代の3件と、独立後の1件を並べると、違いがはっきりします。

雇われ時代 独立後
報酬 勤務時間内なら給与が出る ゼロ
判断 上司の承認・事業所の方針がある 止める人がいない
失敗したとき 会社が背負う 自分だけが背負う

覚悟の差ではありません。報酬と責任の出方の差です。

ただし、雇われていて、会社が業務外の対応を容認しているから、やってもいい、ではありません。業務外の対応をしている間、居宅介護支援費は1円も入っていません。その時間の給与は、会社が本来の報酬の出ない時間に対して捻出しているお金です。雇われていたころの僕は、そのことに気づいていませんでした。

だから独立後は、介護保険制度以外の手続きは基本的に断る、という意思がさらに強くなりました。通院同行も、コンビニでの公共料金の支払いの代行も、断っています。

そして一つ、独立後の一件から学んだことがあります。断るときも引き受けるときも、「代わりに誰が」を一緒に出さないと、その手続きは誰もやらないまま止まります。困るのは利用者です。そして、目の前で利用者が困っていれば、結局自分がやることになります。

断り方の型。「ケアマネではできないサポートなんです」から3段階

今の僕の断り方は、順番が決まっています。

最初の一言は「それはケアマネではできないサポートなんです」です。そのあとに、必ず3段階で代わりを出します。

  1. 介護保険サービスでできることをまず説明する。訪問介護の生活援助で対応できる範囲なら、そこで解決します。
  2. 介護保険でできなければ、保険外サービスを紹介する。訪問介護事業所の自費サービスが多いです。
  3. そこも範囲外なら、社協など適した先を紹介する。日常生活自立支援事業や成年後見制度が必要な話は、ここに行きます。

ケアマネではできないサポートなんですと伝えたあと、①介護保険サービス→②保険外サービス→③社協など適した先の3段階で代わりを出す流れ。断るときは理由の説明と代わりの先をセットで出す

相談内容によっては、この3段階目の対応でも、紹介先に迷うケアマネは多いと思います。僕は、相談先の当たりをつけるのにAIを使っています。「〇〇市で、身寄りのない高齢者の金銭管理を相談できる窓口は」と聞くと、社協・包括・市の担当課のどこに持っていくべきかの候補が出ます。個人情報は一切入れません。最後は必ず市のページで確認します。

断ること自体は、生活保護の記事や住宅改修の理由書の記事でも書いてきました。共通しているのは、断るときに理由の説明と代わりの先をセットで出す、というやり方です。

▶ 住宅改修の理由書、ケアマネが書かなきゃダメ?|11年で1回しか書いていないやり方

リーフレットは、最初から出さない

市のリーフレットを使うなら、僕は「業務外の相談で、相手の理解が難しいとき」に限ると思っています。最初から紙を出すと、雰囲気が硬くなります。気軽な相談ができなくなると、本当に大事な相談が来なくなります。広島市が「リーフレットの活用は必須ではない」と書いているのは、この感覚と同じだと読みました。

家族からの要望をどこで断るかは、クレームの記事で説明の実例を書いています。

▶ 家族からのクレームにどこまで応じるか|ケアマネが線を引くときの説明トーク実例

契約書・重説には「できないこと」は書いていない

ここは意外でした。自分の事業所の契約書と重要事項説明書を読み返したところ、「できないこと」を明記した条項はありませんでした。書いてあるのは「やること」の列挙です。契約書なら計画作成、作成後の援助、施設入所の相談援助。重説なら提供するサービスの手順と業務の一覧。

つまり、断る根拠を契約書に求めても、そこには「やらないこと」のリストはありません。あるのは「やること」のリストで、そこに載っていないことが業務の外側です。契約時にこの範囲をどう口頭で説明しているかは、契約の記事に書いています。

▶ ケアマネの契約で何を説明する?必ず口頭で話す5項目と「2時間」の中身【独立3年目の実録】

まとめ:断れるかどうかは、あなたの弱さではなく事業所の方針で決まる

市のリーフレットが出るのは心強いです。ただ、リーフレットがなくても、ケアマネ自身がはっきり言えるようにならないといけない、と僕は思っています。紙は説明の道具で、断るかどうかを決めるのは自分です。

あなたの市に、この種のリーフレットはありますか。なければ、広島市や三鷹市のものを一度読んでみてください。「できないこと」の欄に並んでいる項目の中に、いま自分が引き受けているものがいくつあるかを数えるだけで、自分の業務の外側が見えてきます。

そしてもう一つ。雇われ時代の僕が3件とも引き受けられたのは、会社が引き受ける前提だったからです。断る発想がなかったのは、僕が弱かったからではなく、事業所の方針がそうだったからです。逆に言うと、いま断れずに業務外を引き受け続けているとしたら、それはあなたの性格の問題ではなく、事業所の方針の問題である可能性が高いです。

方針は、一人のケアマネの努力では変えにくいものです。業務外を断れる事業所を探す、という選択肢も持っておいてください。

業務外の仕事を断れる事業所かどうかは、面接で聞けます

「利用者から通院同行や金銭管理を頼まれたとき、事業所としてどう対応していますか」と聞いてみてください。方針がある事業所は、即答できます。転職サイトを使うなら、この質問を担当者に先に投げておくと、面接前に答えが返ってきます。

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