実務・ノウハウ系

暫定ケアプランの判断軸は2本だけ|ローカルルールを調べる前に、運営基準第13条を読む

暫定ケアプランは、新人のころ一番苦戦した業務のひとつでした。上司に確認したくても、なかなか聞けない。先輩からは「実務の流れ」として教わるだけで、なぜそうするのかは誰も説明してくれない。ケアマネの研修でも、運営基準の読み方までは教えてくれません。

だから僕は、「赤本」と呼んでいる運営基準(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準)の第13条を、自分の目で読み込むことにしました。

「暫定ケアプラン」で検索すると、自治体の取扱いPDFがずらっと並びます。あれを見て「うちの市はどうなんだろう」と迷子になった人は多いはずです。でも、ローカルルールを探しに行く前に押さえておくことがあります。

この記事では、暫定ケアプランの判断軸を2本に限定して紹介します。そのうえで、新規申請で「暫定プランを作らないための段取り」、区分変更で暫定プランが2枚になるケース、見込みどおりだったときの本プランへの移行と支援経過の書き方まで、実務の順番で説明します。

結論:判断軸は2本だけ

先に結論です。暫定ケアプランまわりの迷いは、次の2本の軸でほぼ整理できます。

軸1:暫定ケアプランを作るのは、サービス開始時に認定の結果がわからないから

軸2:担当者会議(または照会)をするのは、ケアプランが変わる前

軸1を押さえると、「いつ暫定を作るべきか」が逆算でわかるようになります。サービスを始める日に結果が出ていないなら暫定が要る。出ているなら要らない。それだけです。

軸2は、この記事に出てくる全部のパターンを貫く軸です。新規でも、区分変更でも、本プランへの移行でも、「これからケアプランが変わるのか?」を見れば、担当者会議を開くべきかどうかの答えが出ます。

もうひとつ、前提をそろえておきます。この記事で「暫定ケアプランを作る」と言うときは、担当者会議(または照会)の開催までをセットで指しています。プランの紙だけ作って会議をしないやり方は、そもそもありえません。このセットの感覚が、あとで出てくる「暫定を作らない段取り」の逆算につながります。

ローカルルールを探しに行かない——先に第13条を読む

暫定ケアプランにあたって、僕は保険者のローカルルールを調べません。運営基準第13条を読んで、一連の業務をやったかどうかで判断しています。

第13条には、ケアプラン作成の一連の業務が書いてあります。アセスメント(課題分析)、居宅を訪問しての本人・家族との面接、ケアプラン原案の作成、サービス担当者会議、本人・家族への説明と同意、ケアプランの交付。国の通知でも、ケアプランを変更するときは原則としてこの第13条第3号から第11号までの一連の業務を行う、と整理されています。

暫定ケアプランも、ここは同じです。暫定だからといって、一連の業務は省略しない。アセスメントをして、暫定ケアプランを作り、担当者会議(または照会)をして、サービスを始めて、モニタリングをする。「暫定」という名前がついているだけで、やることは普通のケアプランと変わりません。

だから、迷ったときに見に行く場所は自治体のPDFではなく、第13条です。一連の業務をやってあるかどうか。この物差しは、どの保険者の管内でも変わりません。保険者が独自の取扱いを公開している場合もありますが、それを探し回るより先に、基準の側を自分の言葉で説明できるようにしておく。僕の順番はこうです。

ただし、同じ第13条でもモニタリングの「特段の事情」は事情が違います。定義は国が決めていますが、減算するかどうかの判定権は保険者にあり、申請書の提出を求める市も実在します。この線引きは別の記事にまとめました。

▶モニタリングの特段の事情、入院したら?|国が決めるのは定義だけ、減算を決めるのは保険者

出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)|厚生労働省法令等データベース

新規申請では、「暫定を作らないための段取り」も考える

新規申請や退院時の相談が来ると、「まず暫定を作らなきゃ」と反射的に動きたくなります。でも、必ずすぐに暫定プランを作るとは限りません。僕が最初に考えるのは、シンプルです。暫定プランを作成する必要はあるのか。

要介護認定は、申請から原則30日以内に結果を出すことが介護保険法で決まっています(第27条)。体感でも、だいたい1ヶ月で結果のお知らせが家族などからあります。認定調査や主治医意見書の戻りが遅いと2ヶ月かかった経験もありますが、目安は1ヶ月です。

たとえば入院中に申請したケース。退院までに時間があるなら、介護保険課に審査会の日程を確認します。審査会の数日後に保険者証が発送され、土日祝を挟まなければ1〜2日で届く。つまり、結果がいつ手元に届くかは、逆算できるんです。

保険者証の到着時期に合わせて担当者会議を組めれば、サービス開始の時点で認定結果がわかっている状態を作れます。軸1に戻ってください。暫定を作るのは、サービス開始時に結果がわからないからでした。結果がわかっているなら、最初から本プランで始めればいい。暫定ケアプランそのものが不要になります。

暫定ケアプランを作らない段取りのタイムライン図。申請から審査会、保険者証の発送・到着、担当者会議、サービス開始までを逆算する流れ

※審査会の日程をどこまで教えてもらえるかは保険者によって差があります。僕の市では確認できていますが、まずは介護保険課に聞いてみてください。

区分変更中にサービスが増えるなら、暫定プランが2つになる

暫定ケアプランでサービスを始めたあと、結果が出る前に状態が動くことがあります。

実際にあったのは、生活援助のみで組んだ暫定ケアプランの1週間後に、入浴介助が必要になったケースです。このときは、アセスメントからやり直して暫定ケアプランの2枚目を作りました。一度決めたプランの内容が変わるなら、暫定であっても一連の流れをやり直す。軸2のとおり、プランが変わる前に担当者会議(または照会)です。

「区分変更の結果も出ていないのに、暫定が2枚もあっていいのか」と不安になるかもしれません。僕の整理は逆で、状態の変化に合わせてプランを作り直した記録が残っているということは、しっかりケアマネジメントをしている証拠です。枚数が増えること自体は、何も悪くありません。

なお、モニタリングはプランが2枚あっても月1回で大丈夫です。僕はそれに加えて、電話やLINEで家族・事業所に状況を確認していました。記録が残っていれば、なお安心です。

そもそも区分変更を出すか出さないかの判断は、別の記事に分けています。

▶区分変更、出す?出さない?ケアマネの判断基準|「申請するか」と「プランを動かすか」は別の話

要支援→要介護見込みの区分変更は、「契約」が先

要支援の方の状態が悪くなって、要介護が見込まれる区分変更。ここは順序を間違えると、報酬の請求根拠が崩れます。

やりがちな順序と、正しい順序を並べます。

❌ やりがちな順序

区分変更申請 → 暫定ケアプラン(担当者会議) → 要介護が出てから新規契約 → アセスメント → 本プラン → 担当者会議

⭕ 正しい順序

契約 → 区分変更申請(代行) → アセスメント → 暫定ケアプラン作成(担当者会議または照会) → 要介護が出たら再アセスメント → 本プラン(担当者会議または照会)

要支援から要介護見込みの区分変更における順序の対比図。契約を先頭に置く順序と、契約を後回しにする順序の違い

先頭に契約を置く理由はシンプルで、契約していない期間は、利用者がケアマネに仕事を頼んでいない期間だからです。頼まれていない期間に作ったケアプランの報酬を、あとから請求することはできません。まっさらな新規の方でも、要介護を見込むなら要介護の前提で契約するはずです。すでに関わっている要支援の方でも、同じ考え方になります。

この順序には副産物もあります。僕が経験したのは、要支援のころから包括の委託で予防プランを担当していた方のケースでした。この場合、結果が要支援のままでも担当は変わりません。包括には結果を報告して、プランを見てもらう程度で済みます。区分変更のときに取り直したアセスメントも、そのまま予防プランに活かせます。要介護の前提で契約をしておけば、どちらの結果が出ても、やり直しがほとんど出ないんです。

ただし、要支援のままの可能性があることは、申請の前に本人・家族・サービス事業所へ説明しておきます。見込みはあくまで見込みです。先に伝えておけば、どちらの結果が出ても慌てません。

契約の場で何をどう説明するかは、こちらにまとめています。

▶ケアマネの契約で何を説明する?必ず口頭で話す5項目と「2時間」の中身【独立3年目の実録】

ちなみに、要支援から要介護への移行は、初回加算の算定パターンでもあります。加算側の整理はこちらです。

▶ケアマネの初回加算、このケースで取れる?|3パターンの要件と、入院・事業所変更のグレーゾーン整理

見込みどおりなら、本プランへの移行は「軽微な変更」

暫定ケアプランで一連の業務をやってあり、認定結果が見込みどおりで、サービス内容も変わらない。この場合、本プランへの移行のために同じプロセスをもう一周する必要はありません。

これは僕の独自ルールではなく、国の通知に書いてあります。介護保険最新情報Vol.959の別添に「暫定ケアプランについて」という項があり、本ケアプラン(原案)においても同様の内容が見込まれる場合は、暫定ケアプラン作成の際に行った第13条の一連のプロセスを「必ずしも改めて同様のプロセスを踏む必要はない」とされています。

つまり、担当者会議の開き直しは不要。新しいプランも作成しないので、作成日も署名もそのままです。僕は軽微な変更の型で処理して、支援経過に記録を残し、本人・家族へ電話などで説明して同意を得ています。

支援経過の書き方は、実際にこう書いています。

認定結果を確認(要介護2・暫定ケアプラン作成時の見込みどおり)。暫定ケアプラン作成時にアセスメント・担当者会議など一連の業務を実施済みであり、サービス内容に変更がないため、軽微な変更として本プランへ移行。○/○、本人・家族へ電話にて説明し同意を得るとともに、各サービス事業所へ周知した。

ひとつだけ添えておきます。この書き方で問題ないか、保険者の指導班などへ、メールなど文書に残る形で一度確認しておくとよいです。口頭で聞いただけだと、確認したこと自体の記録が残りません。Vol.959も、取扱いの可否は保険者側も根拠を示して双方が理解できる形で対応するように、という建て付けになっています。

「軽微な変更」そのものの判断軸と、軽微でも担当者会議を開いた照会文面は、本家の記事に全部書きました。

▶ケアプランの軽微な変更、担当者会議は開く?|軽微でも開いた照会文面と、判断の2軸

見込みと違う結果が出たとき

暫定は見込みで作るものなので、外れることもあります。ここでも判断は一本です。認定結果の数字が違うだけなら軽微な変更。認定結果によってサービス内容が変わるなら、一連の流れ。

過去の経験では、要介護2を見込んで要介護1が出たケースです。サービス内容は変わらなかったので、軽微な変更として本プランへ移行しました。一方で、たとえば「要介護2が出たら介護ベッドを使いたい」という組み立てをしていた方に要介護2が出たなら、サービスが動くので一連の流れです。このときの本プランの作成日は、認定結果がわかって担当者会議を開催する日。署名も取り直します。

要支援のままだったケースも経験しています。前の章で書いたとおり、先に契約して自分でプランを作っていたので、包括への引き継ぎはほぼ発生しませんでした。

正直に言うと、非該当(自立)が出た経験はありません。区分変更を出すのは状態が動いたときなので、まず考えにくいパターンだと思っています。

まとめ:暫定プランに、特別なルールはない

最後に整理します。

  • 判断軸は2本。「暫定を作るのは、サービス開始時に認定結果がわからないから」「担当者会議(または照会)は、ケアプランが変わる前」
  • 暫定だからといって、第13条の一連の業務は省略しない
  • 新規申請では、審査会の日程から逆算して「暫定を作らない段取り」を先に検討する
  • 結果待ちの間にサービスが変わるなら、暫定が2枚になっていい
  • 要支援→要介護見込みの区分変更は、契約が先
  • 見込みどおり・サービス不変なら、本プランへの移行は軽微な変更。作成日も署名もそのまま。支援経過に記録し、書き方は保険者へ文書で一度確認しておく

暫定ケアプランに、特別なルールがあるわけではありません。普段のケアマネジメントの一連の業務を、認定結果が出る前に前倒しでやっているだけです。だから、迷ったら第13条に戻る。自治体のPDFを探し回るより、その方が早くて、どこの保険者の管内でも通用します。

参考資料

・厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援・サービス担当者会議・介護支援専門員に係る項目及び項目に対する取扱い(介護保険最新情報Vol.959 別添)」

・指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)|厚生労働省法令等データベース

・介護保険法(平成9年法律第123号)第27条|e-Gov法令検索

-実務・ノウハウ系