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僕がケアマネとしてデビューしたのは、2015年5月です。担当は数件からのスタートでした。
ケアマネ経験のある所長が、熱心に直接教えてくれる職場でした。恵まれていたほうだと思います。
それでも、スマホの着信音が鳴るたびに心臓がきゅっとなっていました。所長が事務所にいるときは、事務所の中で電話をかけるのが嫌で、ご家族やサービス事業所への電話はわざわざ外に出てかけていました。仕事で初めて、泣きそうになったのもこの時期です。
ケアマネ歴11年になった今、当時を振り返ってはっきり言えることがあります。
新人ケアマネが「何もわからない」のは、当たり前です。あなたの能力の問題ではありません。
足りなかったのは知識ではなく、努力でもなく、「型」を渡してくれる職場の環境です。この記事では、僕が新人のころに欲しかった「最初のひと月の型」を、実録込みで渡します。
「何もわからない」の正体——知識がないのは当たり前、最初に覚えるのは「型」
試験に受かったあなたには、教科書に載っている制度の知識はあります。それなのに現場に出ると何もわからない。このギャップの正体は、「ひと月をどう回すか」「それぞれの場面をどう進めるか」という型を知らないからです。
新人がつまずく場面は、だいたい決まっています。
| 場面 | 新人のつまずき |
|---|---|
| 契約・重要事項説明 | 何を、どこまで説明すればいいのかわからない |
| アセスメント | シートを前に、何から聞けばいいのかわからない |
| サービス担当者会議 | 自分の仕切りがこれで正しいのか、不安で仕方がない |
| 担当件数 | 今の自分の件数が多いのか少ないのか、「適切」がわからない |
| 引き継ぎ | 前任者の書類を、どこからどう確認すればいいのかわからない |
この5つの場面については、それぞれ11年目の僕の答えを1本ずつの記事にまとめてあります。いま目の前でつまずいている場面があれば、状況に合わせて読んでください。
▶ ケアマネの契約で何を説明する?必ず口頭で話す5項目と「2時間」の中身【独立3年目の実録】
▶ ケアマネのアセスメントは何を聞く?シート順に聞かない理由と「いつやるか」の判断基準【独立3年目の実録】
▶ サービス担当者会議は15〜30分で終わる|数百回回してきた僕が「全員揃えない・会議の外で決める」運用を全部話します
▶ ケアマネの担当件数、何件が限界?60人担当している僕が「きつさの正体」を話します
▶ ケアマネの引き継ぎ手順|転職2ヶ月で35件引き継いだ僕が「書類より大切」と思うこと
また、この5つを含めた業務全体の流れは、実務記事10本をつないだ1枚の地図にまとめました。「そもそも何から覚えればいいのか」を全体像からつかみたいときは、こちらを起点にどうぞ。
▶ 新人ケアマネの業務マニュアル|「何から覚える?」に実務記事10本の地図で答えます
そして、場面ごとの型の前に知っておいてほしいのが、次の「ひと月の型」です。これがあると、日々の業務が「いま自分は月のどこにいるのか」という地図の上に乗ります。
最初のひと月の型——1〜10日・11〜20日・21日〜月末の3層で回す
ケアマネのひと月は、ざっくり3つの層に分かれます。僕が新人に教えるとしたら、まずこの型から渡します。

1〜10日:レセプトをしながら、モニタリング前半
月初はレセプト(請求業務)と並行しながら、モニタリング訪問の前半を回します。同時にやっておくのが、ひと月の予定確認です。
- その月の1日付で区分変更・認定更新の申請が必要な人の、申請書の準備と申請
- ケアプラン変更の有無の確認(短期目標が終了する人など)
- 11〜20日にモニタリングする人のうち、日程の連絡を取る人のリストアップ
ここで月の全体像をつかんでおくと、後半に「忘れてた」が起きにくくなり、スケジュールに余裕ができます。
このうち区分変更は、3か月に1回あるかないかの頻度だからこそ、いざ当たると迷いやすい業務です。出すか出さないかの判断基準から申請後の段取りまで、こちらの記事で解説しています。
▶ 区分変更、出す?出さない?ケアマネの判断基準|「申請するか」と「プランを動かすか」は別の話
11〜20日:残りのモニタリング
前半で固めたリストに沿って、残りのモニタリングを回します。訪問が中心の期間です。
21日〜月末:翌月の準備と、担当者会議
- 21〜25日:翌月の提供票をサービス事業所へ送付
- 21〜30日:認定更新などのサービス担当者会議は、この期間に設定
そして月末に、翌月の月初にやることの確認をします。区分変更・認定更新・短期目標が終了する人の洗い出しです。たとえば8月にケアプラン変更を予定している人がいるなら、7月の支援経過にアセスメントをした文言が残せているかを、7月のうちに確認しておきます。
週1日は「入力の日」「臨時対応」として空けておく
もうひとつ、型の一部として伝えたいのが、週1日はPC入力・記録のため、臨時対応の日として空けておくことです。この日が、突発のサービス変更の担当者会議や新規対応の余白にもなります。予定をぎっしり詰めた週は、何かひとつ突発が入っただけで全部が崩れます。余白を設けることは心の余裕になります。
1日の回し方——タスクを全部書き出して、順番を決めるだけ
ひと月の型が地図なら、1日の回し方はコンパスです。やることはシンプルで、その日のタスクを全部書き出して見えるようにして、優先順位を決める。これだけです。
書き出す中身は、その日のモニタリングする人の実施記録と支援経過、その他のアセスメントの作成、認定更新の申請、照会の送付——といった具合です。頭の中だけで管理しようとすると、新人のうちは必ず抜けます。抜けること自体より、「何か忘れている気がする」という不安を抱えたまま1日を過ごすことのほうが気持ちにストレスを与えます。書き出してしまえば、その不安が可視化できるので対処・対策を考えることができます。
僕の道具:iPhoneのリマインダーとApple Watch
僕はiPhoneのリマインダーにその日のタスクを入れて、終わったら削除しています。持ち越したタスクは、翌日の業務開始15分前にリマインドが来るように設定します。
そしてApple Watchがとても便利です。外にいる時間を見越して「〇〇さんに電話」とセットしておくと、ちょうどいいタイミングで手元に通知が来て、そのまま電話やLINEでの連絡ができます。道具は何でもいいのですが、「書き出す→見える→順番を決める」の3つが回る道具を、早めにひとつ決めてしまうのがおすすめです。
【実録】新規の利用者を前に、僕は眠れなくなった
型の話をしてきましたが、型があっても新人時代はしんどい。ここからは僕の実録です。
特養上がりの僕は、ケアマネデビューして間もないころ、肺の疾患のある方の新規を担当しました。状態からみて、訪問看護を入れる必要があるケースでした。
ところが、僕には何もわかりませんでした。主治医の指示書はどうやって取るのか。訪問看護ステーションはどう探すのか。新規の照会では、どんな言葉を選べばいいのか。ご本人とご家族には、どこまでどう配慮して話せばいいのか。ケアプランの文言は、どう書けばいいのか。ひとつ調べると、わからないことが2つ増えるような状態でした。
そんなとき、所長に言われたんです。
「早くサービス整えないと、その人死んじゃうよ」
その晩から数日、眠れませんでした。大げさではなく、自分の手配が進まないせいでこの人を死なせてしまう、と本気で思っていたからです。
ケアマネ歴11年になった今なら、整理して言えます。責任の重さそのものは、本物でした。ケアマネは人の生活と命に関わる仕事です。そこをごまかす気はありません。ただ、その責任の渡し方は、もう少し上手にできたはずだとも思っています。追い詰める一言ではなく、指示書の取り方から順番に一緒に並べてくれたら、同じ責任を、眠れなくならずに受け取れたはずです。
だから僕は、「知らない者が知っている人に教えを請うのが当たり前」という考え方には賛同できません。新人ケアマネが一通り仕事をできるようになるには、職場がちゃんと教えるべきです。まず教える側がノウハウを渡す。新人が自分の型やケアマネ観を育てるのは、その後でいい。順番はこうだと思っています。
職場には教える義務があります。同時に、教わる側にも学ぶ姿勢が要ります。この2つはセットです。この記事で渡している「ひと月の型」や「1日の回し方」は、あなたの学ぶ姿勢の側で使ってください。
なお、この実録で僕がわからなかったこと——指示書の取り方、訪問看護の探し方、相談の言葉の選び方——の「答え編」は、11年目の型として1本にまとめました。
▶ ケアマネと訪問看護の連携術|指示書の依頼から緊急時対応まで実文つきで解説
新人がしんどいのは、あなたのせいではなく職場の問題です
ここまで読んで、「型を知っても、うちの職場ではしんどいままかもしれない」と感じた人がいるかもしれません。その感覚は、たぶん正しいです。
新人ケアマネがしんどくなるのは、職場の問題です。僕はそう断言します。
見分けるラインは3つあります。あなたの職場に当てはめてみてください。
- 新人の困りごとを察して、配慮しているか
- 週1回など、決まった振り返りの機会があるか
- 業務の理解だけでなく、心の状態を確認しているか
3つ目を「甘やかし」と感じる人もいるかもしれませんが、違います。心の状態まで確認しておけば、「続けるのが難しい」「この案件はまだ難しい」となったときに、会社の側も早く手を打てます。つまり会社にとっても合理的なんです。逆に、教える側と新人のギャップを放置したまま独り立ちさせると、そのケアマネが育ちません。それは職場の損失です。
もしあなたの職場が3つとも当てはまらないなら、しんどさの原因はあなたの適性ではなく環境にあります。新人のうちは「自分が我慢すればいい」と考えがちですが、育ててもらえない職場で消耗し続ける必要はありません。環境を変えるのも、立派な選択肢です。
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そして、職場を変える・変えないの前に、今日からできる処方箋をひとつ。
「辛いのを知ってくれる人」を、1人つくってください。
僕を支えてくれたのは、職場の1つ上の先輩でした。所長に何か物申してくれるわけではありません。ただ、ときどき食事に連れて行ってくれて、僕がしんどいことを知ってくれていました。それだけで、ずいぶん違いました。解決してくれる人でなくていいんです。知ってくれている人が1人いるだけで、人の気持ちは救われるんです。
新人ケアマネのよくある質問
Q1. 独り立ちはいつごろできますか?
僕は数件から始めて、半年くらいで一人で回し始めました。ただ正直に言うと、一人で回し始めたころは「自由に動ける体を手に入れた!」という開放感から空回りをして、本当に「ケアマネができる」と実感できたのは2〜3年目です。半年で完璧になる必要はありません。独り立ちは「一人で回せる」であって「全部わかる」ではない、と割り切ってください。
Q2. もう辞めたくなっています。どう考えればいいですか?
辞めたい対象が「ケアマネという仕事」なのか「今の職場」なのかを、まず分けて考えてください。新人のうちは、この2つが混ざって見えます。ひとつ前の章の「見分けるライン3つ」に職場を当てはめてみて、職場の問題が大きいなら、辞めるべきはケアマネではなく職場かもしれません。
Q3. 家族に心配をかけたくなくて、しんどさを話せません
僕も新人のころ、家族には話しませんでした。心配をかけたくなかったからです。それでいいと思います。無理に家族に話す必要はありません。その代わり、職場や友人など、1人だけ、辛いのを知ってくれる人をつくってください。全部を解決してもらう必要はなく、知っていてもらうだけで気持ちが救われるはずです。
まとめ:「何もわからない」は、通過点です
最後に、この記事の型をまとめます。
- 「何もわからない」の正体は、知識不足ではなく「型」を知らないだけ
- ひと月は3層で回す:1〜10日はモニタリング前半と月の予定確認、11〜20日は残りのモニタリング、21日〜月末は提供票と担当者会議。週1日は入力の日として空ける
- 1日は「書き出す→見える→順番を決める」で回す
- 責任の重さは本物。ただし、その渡し方を選ぶのは職場の仕事
- しんどさの原因は職場にある。見分けるラインは「察して配慮・振り返りの機会・心の確認」の3つ
- 辛いのを知ってくれる人を、1人つくる
着信音に怯えて、外で電話をかけていた僕でも、11年続けてこられました。「何もわからない」は、あなたが劣っているというサインではなく、誰もが通る通過点です。型はこの記事で渡しました。あとは場数が解決してくれます。
そして、場数を積む場所は選べます。教えてもらえない職場で消耗しているなら、教えてもらえる職場で場数を積むほうが、あなたのケアマネ人生は確実に長持ちします。
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あなたの最初のひと月が、少しでも軽くなりますように^^