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「施設ケアマネと居宅ケアマネ、何が違うんだろう」と調べると、勤務先・担当人数・仕事内容を表で並べた記事がたくさん出てきます。
ただ、読み終わって残る疑問がひとつあると思います。施設ケアマネは1人で100人を担当するのに、居宅ケアマネは40件ほどで手一杯。同じ資格なのに、なぜここまで差があるのか。
僕は特養で介護職として7年働き、そのあと居宅のケアマネになって11年になります。先にお断りしておくと、施設ケアマネとして働いた経験はありません。ただ、特養の「中の人」だったからこそ、表の比較記事には書かれていない答えを知っています。
この記事では、施設と居宅の違いを制度の数字と現場の実態の両方から、次の順で話します。
- 特養に7年いたのに、施設ケアマネと話した記憶がないこと
- なぜ1人で100人を担当できるのか(配置基準と、現場の分担の実態)
- 居宅は逆に、1人で全部背負う仕組みであること
- 「サービスに合わせる」と「生活に合わせる」の実感の差
- どっちが向いているかの判断軸
施設ケアマネと居宅ケアマネは「同じ資格・別の仕事」
結論から言うと、施設ケアマネと居宅ケアマネは、資格こそ同じ介護支援専門員ですが、仕事の組み立てがまったく別物です。
数字がそれを物語っています。制度上、特養のケアマネは入所者100人につき1人が標準。一方、居宅のケアマネが満額の報酬で担当できるのは1人あたり44件まで(条件を満たす事業所は49件まで)。同じ資格に、制度が正反対の数字を置いているんです。
この差の理由を「施設は利用者が同じ建物にいるから移動がなくて楽」と説明する記事が多いのですが、それは半分が正解です。もう半分の答えは、施設の中で働いた人間にしか見えません。
そこで次の章から、僕が特養で見ていた実態の話をします。
特養に7年いて、施設ケアマネと話した記憶がない
正直に書きます。僕は特養で介護職として7年働きましたが、施設ケアマネと仕事の話をした記憶がほとんどありません。名前と顔が一致していたかも怪しいくらいです。ケアマネは介護現場のフロアではなく、事務所で生活相談員と同じ部屋にいました。
では、入所者のケアプランは誰が作っていたのか。
僕の職場には「計画作成係」という役割がありました。担っていたのは介護職です。モニタリングの打ち込みをして、ケアプランの案を作る係。僕自身、この係を1〜2年担当していました。課題や目標の文章まで自分で書いて、カンファレンスの司会進行もしていました。当時は、それがケアマネの仕事の一部だなんて思ってもいませんでした。
完成したプランは、生活相談員が家族へ郵送して署名を回収する流れでした。入所時の初回プランを相談員が作ることもありました。
つまり、僕のいた特養では、ケアプランを作る仕事が介護職・相談員・ケアマネのチームに分かれて流れていたんです。介護職の僕がプランの文章を書き、相談員が家族とやり取りし、ケアマネが全体をまとめる。だから現場の介護職から見ると、施設ケアマネの姿はほとんど見えない。
これは約12年前の、ひとつの特養の話です。今は運用が変わっている施設も多いと思います。ただ、この経験が「なぜ1人で100人を担当できるのか」の答えにそのままつながっています。
なぜ施設ケアマネは1人で100人を担当できるのか
まず制度の数字から確認します。特養の人員基準では、介護支援専門員の配置は「1以上(入所者の数が100又はその端数を増すごとに1を標準とする)」と定められています。100床の特養ならケアマネ1人が標準、という意味です。実際、僕のいた特養も100床でケアマネは1人でした。
出典:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条(ページ内検索:介護支援専門員)
「100人なんて物理的に無理では?」と思いますよね。居宅ケアマネの感覚なら当然の疑問です。でも施設では成立します。理由は2つあります。
理由①:利用者の情報が、毎日チームに集まってくる
居宅ケアマネは、月1回の訪問で利用者の変化をつかみに行きます。一方、施設の入所者は24時間365日、介護職・看護職の目の中で生活しています。食事量も、夜間の様子も、家族の面会も、記録として毎日蓄積されていく。ケアマネジメントの材料が、ケアマネが動かなくても集まってくる構造なんです。
理由②:プラン作成の実務が、チームに分かれている
前の章で話した「計画作成係」がまさにこれです。アセスメントの材料集め、モニタリングの記録、プラン案の文章化、家族対応——居宅なら全部ケアマネ1人でやる工程が、施設では複数の職種に分かれて流れていました。
ここでひとつ、正確に整理しておきます。制度の建て付け上、施設サービス計画の作成はケアマネの仕事です。基準の第12条には、アセスメント(本人・家族への面接を含む)と計画原案の作成を「計画担当介護支援専門員」が行うと定められています。だから、係が案を作っていても、最終的な責任者はケアマネ。分担は施設ごとの工夫であって、丸投げの話ではありません。
出典:指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第12条(ページ内検索:計画担当介護支援専門員)
まとめると、施設ケアマネが1人で100人を担当できるのは、本人が特別に速いからではなく、ケアマネジメントの工程がチームに溶けているから。これが、転職サイトの比較表には出てこない答えです。
居宅ケアマネは逆。1人で全部背負う
居宅に来て、僕は同じ工程を全部ひとりでやることになりました。
アセスメントの面接も、プランの文章も、担当者会議の招集と司会も、モニタリング訪問も、給付管理も、家族への説明も。施設で「係」や「相談員」に分かれていた仕事が、居宅では全部ケアマネ1人に集まります。利用者は一人ひとり別の家で、別の生活をしていて、情報は自分から取りに行かないと入ってこない。

だから制度も、居宅には正反対の数字を置いています。現行の基準では、居宅ケアマネ1人あたりの担当は44件までが基本。ケアプランデータ連携システムなどの活用と事務職員の配置がある事業所は49件まで広がりますが、それを超えると1件あたりの報酬が下がる仕組み(逓減制)です。
ちなみに、比較記事でよく見る「居宅の上限は35件」は、2024年度の報酬改定より前の古い数字です。検索上位の記事でも更新されていないものがあるので、数字を見るときは改定年に注意してください。
担当件数の実感——60人(要支援含む)を担当して何がきついのか——は、こちらの記事で件数の数え方から話しています。
▶ ケアマネの担当件数、何件が限界?60人担当している僕が「きつさの正体」を話します
「サービスに合わせる」と「生活に合わせる」——働いて感じた一番の違い
数字よりも大きい違いが、もうひとつあります。支援の主導権です。
特養の入所者は、基本的に要介護3以上。認知機能が低下している方が多く、「自分で何かしたい」という訴えや意欲が表に出ることは、正直多くありませんでした。生活は施設のリズムの中にあり、利用者がサービスに合わせるのが基本になります。食事の時間も、入浴の曜日も、施設の枠組みが先にある。
誤解しないでほしいのですが、施設がそれを放置しているわけではありません。この構造を改善するための仕組みがユニットケアで、僕自身、ユニットケア研修とユニットリーダー研修を修了して、その動きの中にいました。施設側も「一人ひとりの暮らし」に近づけようと動いています。
それでも、居宅に来て支援の主導権が本人側に移ったのは、はっきり感じました。在宅では、本人の生活が先にあって、そこにサービスを合わせる。意向の主語が本人に変わるんです。できないこと・助けてほしいことを本人と家族から聞き取って、その人の生活スタイルに合わせてサービスを組む。1件1件、正解が違います。
この「施設はサービスに合わせる/在宅は生活に合わせる」という整理は、介護福祉士からケアマネを目指す方に向けたこちらの記事でも触れています。5年の実務経験の過ごし方とあわせてどうぞ。
▶ 介護福祉士からケアマネになるには|5年の実務経験を"待ち時間"にしない過ごし方
どっちが向いているか——僕なりの判断軸
ここまでの構造の違いを踏まえて、向き不向きを整理します。
施設ケアマネに向いているのは、似たケースを安定した環境で着実にこなしていきたい人です。利用者層が比較的そろっていて、情報がチームに集まり、多職種が同じ建物にいる。ひとつの箱の中で仕事が完結する安心感は、施設ならではです。
居宅ケアマネに向いているのは、自分のケアマネ観・介護観をもとに、利用者の人生に関わってQOLを良くしていきたい人です。1件1件生活が違うぶん、自分の判断で物事が進む場面が多い。医療職と意見がぶつかることもあります。制度を自分で調べて、解釈して、考えをはっきり言葉にできる人。議論が嫌いじゃない人。そういう人には、居宅は面白い仕事です。
ひとつだけ、居宅を選ぶ人への注意があります。1人で全部背負う構造は、裏を返すとどこまでやるかの線引きも自分で決めるということです。制度の外の頼まれごとは、居宅のほうが確実に多い。線を引く力がないと、際限なく仕事が膨らみます。逆に言えば、業務範囲を自分で線引きできる人にとっては、裁量の大きさがそのまま働きやすさになります。
なお、同じ居宅ケアマネでも、職場の併設サービスによって仕事の景色はかなり変わります。訪問介護併設・訪問看護併設・独立の3つを経験した比較はこちらです。
▶ 訪問介護併設・訪問看護併設・独立、ケアマネ3つの職場で気づいたこと
まとめ|違いの正体は「チームで回すか、1人で背負うか」
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 施設ケアマネと居宅ケアマネは、同じ資格の別の仕事
- 特養のケアマネ配置は入所者100人に1人が標準。1人で回るのは、ケアマネジメントの工程がチームに溶けているから
- 制度上、施設サービス計画の作成責任はケアマネ(計画担当介護支援専門員)にある。分担は施設の工夫
- 居宅は1人で全工程を背負う。担当は44件まで(条件を満たせば49件まで)が満額の枠
- 施設は「サービスに合わせる」、在宅は「生活に合わせる」。意向の主語が変わる
- 安定した箱の中で着実にやりたいなら施設、自分の判断で人の生活に関わりたいなら居宅
僕は特養で7年、プランの文章まで書いていたのに、居宅に来たら何もわからない状態からのスタートでした。それくらい別の仕事です。でも、だからこそ言えます。どちらが上でも下でもなく、自分に合う側を選べばいい。
そして、施設か居宅かと同じくらい、どの職場を選ぶかで仕事の中身は変わります。いまの環境に無理を感じているなら、資格はそのままに働く場所を変える選択肢があることも、頭の片隅に置いておいてください。
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