働き方のリアル

ケアマネと訪問看護の連携術|指示書の依頼から緊急時対応まで実文つきで解説

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新人の頃、僕は訪問看護の指示書が何なのかもわかりませんでした。肺の疾患がある新規の利用者さんに訪問看護を入れる必要があって、指示書の取り方も、訪問看護の探し方も、相談の言葉の選び方もわからない。上司の「早くサービス整えないと、その人死んじゃうよ」の一言で、数日眠れなくなったこともあります。

新人ケアマネが「何もわからない」のは当たり前|着信音に怯えていた僕が教える最初のひと月の型

あれから11年。いまの僕は、相談を受けてから2〜3日で訪問看護を整えられます。この差は、知識の量ではありません。「型」を持っているかどうかです。

僕は訪問看護が併設された居宅介護支援事業所で働いていた時期があります。同じ事務所の看護師さんから「ケアマネさんの視点だとこれってどう見えます?」と相談される側になったり、地域の医療機関や訪問診療の実情を看護師さん経由で聞けたり。あの環境で、訪問看護が「何をされたら動きやすいか」を内側から見られたのは、大きな財産になっています。

この記事では、指示書の依頼から緊急時対応まで、僕が実際に使っている型を、実文つきで全部話します。

訪問看護導入の全体の流れ——ケアマネがやること・やらなくていいこと

まず全体像です。訪問看護を入れるとき、僕はこの順番で動いています。

訪問看護導入の6ステップの流れ図。相談から説明、受診時に主治医へ伝達、訪問看護ステーションへ相談、指示書手配、契約まで。指示書の手配は訪問看護と主治医の間で行われる

  1. 本人・家族から相談を受ける(またはケアマネ側から提案する)
  2. 本人・家族に訪問看護の役割を説明する
  3. 受診のときに、主治医へ「訪問看護の提案があった」と伝えてもらう
  4. 訪問看護ステーションへ相談する
  5. 指示書の手配は訪問看護ステーションが主治医とやり取りする
  6. 契約・サービス開始

ここで大事なのは、指示書の手配そのものはケアマネがやらなくてもいい、ということです。指示書は主治医が交付し、訪問看護ステーションが受け取るもの。ケアマネが医療機関と指示書の書式のやり取りをしなくても問題なく進められます。

じゃあケアマネは何をするのか。ケアマネの仕事は「依頼」ではなく、「前提を揃える」ことです。本人・家族が訪問看護の役割を理解している。主治医が「ケアマネから提案があった」と知っている。訪問看護が動き出すのに必要な情報が揃っている。この状態を作っておけば、あとは各専門職がスムーズに動けます。逆にここを飛ばして「訪問看護お願いします」とだけ投げると、確認の往復が何度も発生して、結局サービス開始が遅れます。

ちなみに、訪問看護の導入を検討するタイミングとして多いのが退院時です。退院対応の全体の流れは、こちらにまとめています。

ケアマネの退院対応の流れ|カンファに出ない退院は珍しくない【独立3年目の実録】

指示書は誰が依頼する?——現場の答えと「前提の揃え方」

「訪問看護指示書って、ケアマネが病院に頼むんですか?」——新人の頃の僕が一番わかっていなかったのがここです。

僕の考えはこうです。指示書のやり取りは訪問看護ステーションと主治医の間で行う。ケアマネがやるのは、その手前の「主治医が快く指示書を書ける状態」を作ること。

具体的には、本人・家族に「次の受診のとき、先生に伝えてください」とお願いします。実際に僕が本人・家族のグループLINEに送っている文面が、これです(個人が特定される情報は加工しています)。

【訪問リハビリ・訪問看護のご提案とその理由】
▷訪問リハビリ(週1回)
転倒リスクと体力維持のため、理学療法士さんに自宅へ来てもらい、ご状態に合わせたリハビリ方法の指導・助言をしてもらいます。
▷訪問看護(月1〜2回)
多くのお薬(10種類以上)を服用されており、体調の変化が起きやすい状況です。看護師さんが定期的に体調を確認し、気になることがあれば先生へ情報をつなぐ役割です

次回の受診の際に、先生へ「ケアマネから訪問リハビリと訪問看護の提案があった」とお伝えいただき、先生のご意見・ご指示をお知らせいただけると助かります🙏

この文面のポイントは3つあります。

①指示書を「医師の許可」と翻訳する。本人・家族に「指示書が必要で」と言っても伝わりません。「訪問看護は、お医者さんの許可があって初めて入れるサービスなんです」と言い換えると、受診時に先生へ伝える心構えができます。

②受診時に主治医へ伝えてもらう「台本」を渡す。「ケアマネから訪問看護の提案があった、と伝えてください」——ここまで具体的に書きます。本人・家族は診察室で緊張します。何をどう言えばいいか、そのまま読める形で渡すのが親切です。主治医側も、本人・家族の口から聞くことで「本人たちが納得している提案だ」とわかります。

③LINEか書面で、必ず形に残す。口頭で伝えると「聞いてない」「言ったはず」が起きます。文字で残せば、家族間での共有もそのまま転送で済みます。

訪問看護への新規相談は「4ブロック」で送る

主治医の意向が確認できたら、訪問看護ステーションへ相談します。僕は電話ではなく、まず文書(FAX・メール)で送ります。実際に送っている相談文書がこれです(個人が特定される情報は加工しています)。

いつも大変お世話になっております。新規の患者さんのご相談をさせてください。

【概要】
70代・女性。要介護2。独居(近隣に長女様)。主疾患は呼吸機能低下を伴う難病(※主治医意見書上、症状の安定性は「不安定」)

【現在の状況】
先月退院。ADLは屋内伝い歩き。服薬は10種類以上で自己管理に不安あり。誤嚥リスクの指摘あり。福祉用具(手すり・歩行器)導入済み

【ご依頼したい内容】
・全体観察(呼吸・循環)
・服薬管理の助言
・主治医との連絡連携
・嚥下面の観察
・頻度は月1〜2回を想定
※あわせて訪問リハビリ(週1回程度)も検討中です

【主治医の意向】
先日の受診時、主治医より訪問看護・リハビリともに「ぜひ進めてください」とのお話をいただいております。

構成は「概要」「現在の状況」「依頼したい内容」「主治医の意向」の4ブロックです。受け取った訪問看護は、この1枚で「受けられるか」「誰を担当にするか」「初回に何を見るか」まで判断できます。特に最後の「主治医の意向」は効きます。指示書が出る見込みがあるとわかるので、訪問看護側も安心して動き出せます。

ステーションの選び方——最初に見えるのは2つだけ

「どの訪問看護を選べばいいですか?」とよく聞かれますが、正直、最初に見えるものは多くありません。僕が基準にしているのは「会話の丁寧さ」と「看護・介護への熱量」です。相談したときの返答の丁寧さ、質問の的確さ、利用者さんの話への食いつき。最初はここしか見えませんが、ここに出るものは訪問の質にもだいたい出ます。

そのうえで、実務的な確認事項はこうです。

  • 空き状況と24時間体制の有無は都度確認する(体制は変わるので、前回の記憶で判断しない)
  • 24時間対応の加算を希望するかは、契約時に本人・家族へ確認する(費用が変わるため)
  • リハビリ職(理学療法士等)の在籍はニーズ次第で確認する(僕の肌感では、半数近くのステーションに在籍しています)

急ぎのときの型——文面先行、1〜2時間で電話

急ぎのケースでも、僕はまず文面を送ります。そのうえで、1〜2時間たって返信がなければ電話します。いきなり電話をすると、相手は訪問中かもしれません。文面が先に届いていれば、電話がつながった瞬間に「あの件ですね」で話が始まります。折り返し合戦になるより、結局この方が速いです。

あわせて、福祉用具の事業所へもほぼ同じ文面を同時に送ります。急ぎのケースは訪問看護と福祉用具が同時に動くことが多いので、同じ情報を同じタイミングで展開しておくと、各所の動き出しが揃います。

ちなみに、文書を先に送って会議や照会を回す型は、担当引き継ぎのときも同じです。僕が使っている照会文書の実物は、こちらに載せています。

ケアマネの引き継ぎ手順|転職2ヶ月で35件引き継いだ僕が「書類より大切」と思うこと

その訪問看護、医療保険?介護保険?——最低限これだけ

訪問看護で新人ケアマネがつまずくもうひとつの壁が、保険の区分です。「要介護認定があるのに、医療保険の訪問看護?」——ここは最低限だけ押さえれば大丈夫です。

原則:要介護・要支援の認定がある人の訪問看護は、介護保険。ただし、例外が3つあります。

例外①「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表7)に該当する人。末期の悪性腫瘍(がん末期)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患(重症度の条件あり)など、告示で定められた疾病等に該当する場合は、要介護認定があっても医療保険の訪問看護になります。週4日以上の訪問も可能です。

ここでケアマネ実務として大事なのは、医療保険の訪問看護は、介護保険の給付限度額(区分支給限度基準額)の管理外だということです。つまり、訪問看護が使っていた単位数がまるごと空きます。その分、福祉用具やヘルパー、デイサービスに枠を回せる。がん末期のケースでサービスを厚くできるのは、この仕組みがあるからです。

例外②特別訪問看護指示書が出ている期間。急性増悪などで一時的に頻回の訪問看護が必要になったとき、主治医が交付する指示書です。有効期間は14日以内で、この期間は医療保険の訪問看護に切り替わります。

例外③精神科訪問看護指示書による訪問看護。精神科の主治医が交付する指示書で行われる訪問看護は、医療保険です。

訪問看護が医療保険か介護保険かの判定チャート。別表7該当・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書の場合は医療保険、それ以外の要介護認定者は介護保険

結論を言います。該当するかどうかの判断は主治医がします。実務上の確認は、訪問看護に聞けばいい。ケアマネが告示の原文を暗記する必要はありません。ただし、基礎がゼロだと会話が成立しません。「がん末期だから医療保険ですね」——これくらいの一言が通じるかどうかで、訪問看護からの信用は変わります。任せることと、知らないことは別です。

出典:厚生労働省近畿厚生局「訪問看護療養費の取扱いの理解のために」(ページ内検索:末期の悪性腫瘍)/厚生労働省「訪問看護(参考資料)」(社会保障審議会介護給付費分科会)

※本記事は執筆時点の制度に基づいています。個別のケースの保険適用は、必ず主治医・訪問看護・保険者に確認してください。

医療連携、誰にも聞けないまま消耗していませんか

指示書も保険の区分も、教えてくれる先輩がいる職場なら数ヶ月で身につきます。逆に、聞ける人がいない職場で一人で抱えているなら、それはあなたの能力の問題ではなく環境の問題かもしれません。医療連携を学べる環境かどうかは、職場を選ぶ立派な基準です。

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動き出してからの連携——報告書は読み流していい、そのかわり

訪問看護が始まると、毎月、訪問看護報告書が届きます。正直に言います。報告書は読み流していいです。そのかわり、僕は最初にひとつだけ合意を作ります。「気になる変化があったら、報告書ではなく、その都度LINEをください」——これです。

報告書は月に1回、過去をまとめたものです。ケアプランの変更がなくても、日々の変化があったこと(内容の把握まではできなくても)を知っておくのはチーム連携で必要なことです。だから、日頃から気軽に連絡し合える関係を作ります。この合意さえあれば、報告書は「大きな見落としがないかの確認」でよくなります。

そして、共有はもらう一方ではありません。悪い変化だけでなく、良い変化もケアマネから送ります。モニタリングで「最近、ご自分で買い物に行けるようになった」と聞いたら、それを訪問看護にも共有する。サービスの成果が見える情報は、現場の看護師さんのモチベーションにも、次のケアの質にも直結します。

必要なときに共有し合う文化を作るのは、ケアマネの仕事だと僕は思っています。——偉そうに書きましたが、僕自身、まだ足りないところもあります。それでも、この方向を目指して動くかどうかで、チームの動きは確実に良い方向に変わります。

細かい運用も2つだけ。訪問時間の変更は、本人・家族と訪問看護で直接やり取りしてもらいます(ケアマネが挟まると遅くなるだけです)。そのかわり、提供票と実績がずれないよう、変更があれば提供票の確認だけお願いしておきます。一方で、訪問回数の増減や内容の変更はケアプランに関わる場合があるので、ケアマネが介入します。ここの線引きを最初に伝えておくと、お互い迷いません。

ちなみに、利用者さん・ご家族とのLINEでのやり取りの仕組みは、モニタリングの記事で詳しく書いています。

ケアマネのモニタリングは毎月20日までに終わる|60人担当の僕が「日程調整を消す仕組み」を全部話します

緊急時の連絡ルール——ケアマネが仲介しない勇気

訪問中に利用者さんの状態が急変した。救急搬送になった。——このとき、ケアマネはどう動くべきか。僕のルールはシンプルです。

①サービス提供中の緊急対応は、訪問看護の判断に任せる。その場にいる医療職より的確な判断を、電話の向こうのケアマネができるはずがありません。

②家族への第一報は、対応した訪問看護から直接入れてもらう。ここが今日いちばん伝えたいところです。ケアマネが間に入ると、「いま確認しますね」という空白の時間が生まれます。家族は、いますぐ知りたいんです。その場にいた人から直接聞くのが、いちばん早くて、いちばん正確です。ケアマネが仲介しないのは手抜きではなく、家族のための判断です。

③訪問看護からケアマネへの報告は、電話で受ける。普段は「文字で残す」が僕の基本ですが、緊急時は別です。スピードが最優先の場面で、報告書に丁寧に落としてもらう必要はありません。電話で要点だけもらいます。

④関係各所への展開は、ケアマネから。ヘルパー、デイサービス、福祉用具——関係する事業所への連絡はケアマネの仕事です。ここはLINEやFAXの文面と、電話の二重で行います。緊急時こそ「言った・言わない」が起きやすいので、口頭で伝えたうえで、文字でも残します。

そのまま入院になった場合の動き方は、こちらにまとめています。

利用者が入院したらケアマネは何をする?連携シートを「当日30分」で送る僕の段取りを全部話します

一方で、そのまま在宅で看取りに向かうケースもあります。数日で体制を組むことになりますが、ケアマネがやることは決まっています。

在宅看取り、ケアマネは何をする?|余命1週間の連絡から、お看取り後の終結まで

まとめ:連携の正体は「相手の時間を奪わない、質のあるコミュニケーション」

連携というと「密に連絡を取り合うこと」だと思われがちです。僕はそう思いません。なんでも気軽に電話できることは、連携ではありません。訪問中の看護師さんに電話をかければ、看護師さんの時間だけでなく、その先にいる患者さんの時間も奪っています。文面で済むことは文面で。電話は電話でしか間に合わない場面に取っておく。相手の時間を奪わない、質のあるコミュニケーション——それが連携の正体だと思っています。

最後にひとつ。急ぎのケースで僕が最初にやるのは、実は訪問看護の手配ではありません。相談を受けた当日か翌日に、まず介護ベッドを入れます。訪問看護が整うまでの2〜3日、家族は不安の中にいます。そこに1台のベッドが入るだけで、空気が変わります。家族の安心は、物事が動いていることから生まれる。訪問看護の連携も、突き詰めればこの一言に尽きます。

医療連携を学べる職場は、探せばあります

この記事の型は、僕が良い環境と良い先輩に恵まれて身につけたものです。いまの職場で医療連携を誰にも聞けず消耗しているなら、環境を変えることも選択肢に入れてください。

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