20日に訪問する予定だった利用者さんが、19日に入院しました。
モニタリングは、月1回、利用者さんの自宅を訪問して面接するのが原則です。でも、こういう月は必ず来ます。そして「モニタリング 特段の事情」で検索すると、出てくるのは自治体のPDFばかり。読めば読むほど「で、自分の市はどうなんだ」と分からなくなります。
先に結論を書きます。国が決めているのは「特段の事情」の定義だけです。そして、減算するかどうかを決めるのは保険者です。この線引きが分かると、自治体PDFの迷子から抜けられます。
この記事でわかること
- 「特段の事情」の定義の原文と、該当する例・しない例
- 入院で2ヶ月続けて訪問できなかったときの、実際の動き(1ヶ月目・2ヶ月目)
- 申請制と記録制。保険者ごとに割れている運用と、自分の保険者の調べ方
- 支援経過の記載例と、状況の整理をAIに手伝ってもらうプロンプト
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結論:定義は国が決めている。でも、減算するかを決めるのは保険者
前回の記事で「ローカルルールを調べる前に、運営基準第13条を読む」と書きました。暫定ケアプランは、第13条を読めば自分で判断できるからです。
▶ 暫定ケアプランの判断軸は2本だけ|ローカルルールを調べる前に、運営基準第13条を読む
ただ、モニタリングの「特段の事情」だけは事情が違います。定義は国が決めています。運営基準第13条第14号と、その解釈通知です。ここまでは暫定ケアプランと同じ。
違うのは、その先です。「この理由は特段の事情に該当するか。減算するか」の判定権は保険者にあります。実際、事前に申請書の提出を求める保険者が実在します。事業所が自分で「該当する」と判断して、あとから保険者が「該当しない」と判断した場合、返還を求めることがあると明記している保険者もあります。
だからこの記事では「特段の事情を支援経過に記載すればOK」といった説明はしません。第13条を読んだうえで、国の領分(定義)と保険者の領分(減算の判定)をしっかり確認する。これがこの記事の軸です。
「特段の事情」の原文|利用者側の事情だけ。ケアマネ都合は入らない
まず国の領分から。運営基準第13条第14号は、モニタリングについてこう求めています。特段の事情のない限り、少なくとも1月に1回は利用者と面接を行い、かつ、少なくとも1月に1回はモニタリングの結果を記録すること。面接は、原則、利用者の居宅を訪問して行うこと(一定の要件を満たせば、2月に1回の訪問とテレビ電話等の面接を組み合わせる方法も認められています)。
では「特段の事情」とは何か。解釈通知の定義はこうです。
「特段の事情」とは、利用者の事情により、利用者の居宅を訪問し、利用者に面接することができない場合を主として指すものであり、介護支援専門員に起因する事情は含まれない。また、当該特段の事情がある場合については、その具体的な内容を記録しておくことが必要である。
ポイントは2つです。
- 利用者側の事情に限られる。入院で自宅にいない、看取り期で状態が急変した、といった場合が典型です。逆に、ケアマネ側の都合(業務が立て込んだ、自分が体調を崩した、日程が合わなかった)は含まれません。
- 具体的な内容を記録しておくことが条件。該当する事情があっても、記録がなければ事実として扱われません。
特段の事情がないのに訪問・面接をしていない、あるいは記録がない場合は、運営基準減算です。所定単位数の100分の50。その状態が2ヶ月以上続くと、居宅介護支援費そのものが算定できなくなります。そして、特段の事情に該当する場合でも、電話などで状況を把握する動きがなく、記録も残っていなければ、減算と判断されることがあります。
なお、入院以外にもこの定義に当てはまる場面はあります。例えば看取り期です。月の前半にモニタリングを済ませた利用者さんが、翌月の初めに急変して亡くなった。訪問の日程を組む間もなかった。こういうとき、家族への電話でモニタリングを行い、特段の事情として記録してきました。

実録・1ヶ月目|20日に訪問予定、19日に入院。25日に電話でモニタリング
冒頭のケースの続きです。時系列はこうでした。
- 20日:居宅訪問によるモニタリングを予定していた
- 19日:利用者さんが入院。自宅にいないため、訪問・面接ができなくなった
- 25日:病院の相談員と家族に電話。治療の経過、退院の見通し、面会時の様子を確認し、モニタリングとして支援経過に記録した
やったことはこれだけです。「利用者の事情により居宅を訪問し面接できない」という定義に照らして、入院はまっすぐ該当します。だから慌てる必要はありません。やるべきことは、電話で把握できることを把握して、特段の事情の具体的な内容とあわせて記録に残すこと。
ちなみに、入院した当日にケアマネがやる仕事は別にあります。入院時情報連携シートの送付です。この段取りは別の記事にまとめています。
▶ 利用者が入院したらケアマネは何をする?連携シートを「当日30分」で送る僕の段取りを全部話します
実録・2ヶ月目|介護サービスの利用がないなら最低限の業務に留める
問題は、入院が月をまたいで続いたときです。2ヶ月目、僕は利用者さん側へ積極的には連絡しません。
驚く方もいるかも知れませんが、これには制度に則ったちゃんとした根拠があります。報酬の算定基準の留意事項通知に、サービス利用票を作成しなかった月や、作成しても利用実績のない月は、給付管理票を作成できないため居宅介護支援費は請求できない、と明記されています。丸1ヶ月入院していてサービス利用がない月は、そもそも請求が発生しない月なんです。つまり、その月は給付管理や請求の業務が発生しません。減算は請求する報酬を減らす仕組みですから、請求しない月にはその対象になる報酬がありません。
では2ヶ月目のケアマネの仕事は何か。主役はモニタリングではなく、サービス事業所の枠への配慮です。
介護サービス事業所は、入院中もその利用者さんの枠を押さえてくれています。ただ、利用のない状態が1ヶ月続くと契約終了になる事業所や、利用を待っている別の利用者さんに枠を譲る事業所もあります。だから僕は、2週間ごとに病院へ経過と退院の目処を確認して、各事業所に伝えます。「まだ入院中です。退院の目処はこうです」の一報があるかないかで、事業所はとても助かるんです。
一方で福祉用具貸与はすこし考え方が変わります。貸与は退院日からすぐ利用が再開されるので、退院日が分かった時点で「一度状態を確認したいです」と本人・家族に伝えて、モニタリングの日を決めて訪問します。福祉用具は1日でも利用実績があれば給付が発生するためです。
もうひとつ。退院が月内に見込めないときは、事務所と病院の距離によっては、病院を訪問して病室で面接することもあります。入院先を訪問して面接していれば減算としない、と資料に書いている保険者もあります。ここも扱いが割れやすいところなので、自分の保険者に確認しておくと安心です。
特段の事情が出たら、その月の訪問予定は組み直しになります。日程調整のやり方そのものは、こちらにまとめています。
▶ ケアマネのモニタリングは毎月20日までに終わる|60人担当の僕が「日程調整を消す仕組み」を全部話します
保険者の解釈はさまざま|申請制の市と、記録制の市
ここからが保険者の領分です。「特段の事情」の扱いは、大きく2系統に割れています。
- 申請制:該当すると考えられる場合に、保険者へ申請書や理由書の提出を求める運用。例えば、翌月の初めに専用の申請書を提出させて内容を確認する市や、事情が1ヶ月以上続く場合に理由書の提出を求める市があります。この系統の保険者では、確認を経ずに事業所が独自に「該当する」と判断していた場合、あとから返還を求めることがあると明記している例もあります。
- 記録制:申請は求めず、理由の具体的な内容を支援経過などに記録として残すことを求める運用。国の建て付けそのままの形です。
僕の保険者には、調べた限り、公開されている申請書の様式や独自の取扱文書が見当たりませんでした。だから記録制として運用しています。予測できなかった入院で訪問できない、という事情と経過を、支援経過に具体的に残す。それだけです。
そのうえで、ひとつ添えておきます。この扱いで問題ないかは、指導班などへ、メール等の文書に残る形で一度確認しておくとよいです。口頭の確認は残りません。国の通知も、取扱いの可否の判断にあたっては保険者が根拠を示し、双方が理解できる形で対応するように、という建て付けになっています。
自分の保険者の調べ方は単純です。「市の名前+モニタリング+特段の事情」で検索する。出てこなければ、集団指導の資料を見る。それでも分からなければ、文書で聞く。この順番で、だいたい着地します。
支援経過の記載例|家族は続柄で、事業所は実名で
記録の残し方です。僕が支援経過を書くときのルールは2つあります。
- 家族は続柄で書く。妻、夫、長男、長女。誰のことか特定できない書き方(息子、娘、叔母など)はしません。あとから読んだときに、誰と話したのかが分からない記録は記録として弱いからです。
- 関係機関・事業所は実名で詳しく書く。〇〇病院の相談員〇〇さん、のように書きます。機関名や職員の所属・氏名は業務上の連絡先であって、利用者の個人情報とは性質が違います。
そのうえで、記載例を2つ置いておきます。
【1ヶ月目:電話でのモニタリング】
【モニタリング(電話・特段の事情)】
◯月20日に居宅訪問によるモニタリングを予定していたが、◯月19日に体調悪化により〇〇病院へ入院となり、居宅を訪問し本人に面接することができないため、特段の事情に該当すると判断。
◯月25日、〇〇病院相談員の〇〇氏へ電話し、治療の経過と退院の見通しを確認。あわせて妻へ電話し、面会時の様子と本人の意向を確認した。(把握した内容を記載)
以上をモニタリングの結果として記録する。退院日が決まり次第、本人・家族と日程を調整のうえ訪問する。
【2ヶ月目:経過確認と事業所への連絡】
【入院継続に伴う経過確認】
◯月◯日、〇〇病院相談員の〇〇氏へ電話。リハビリ継続中で、退院の目処は未定であることを確認。
同日、訪問介護〇〇のサービス提供責任者〇〇氏、通所介護〇〇の相談員〇〇氏へ電話し、入院が継続していることと退院の目処を伝えた。退院の見通しが立った時点で、再度連絡することとした。
※当月はサービス利用実績がないため、給付管理・居宅介護支援費の請求は行わない。
「サービス利用実績がない」という最後の1行があるだけで、あとから見たときの分かりやすさが違います。請求しなかった月に何をしていたのかが、記録だけで説明できる形になります。
迷ったら、状況を要項に照らす整理をAIに手伝ってもらう
「このケースは特段の事情に該当するのか」と迷ったとき、僕はAIに状況の整理を手伝ってもらいます。加算の根拠を調べるときと同じ使い方です。ここで大事なのは、AIに入れるのは状況だけで、個人情報は入れないこと。日付と「病院」「家族」といった一般名詞だけで、整理には十分です。
コピーして使えるプロンプト
これから伝える状況が、居宅介護支援のモニタリングにおける「特段の事情」に該当しそうか、運営基準第13条第14号と解釈通知の定義(利用者側の事情に限られ、介護支援専門員に起因する事情は含まれない)に照らして整理してください。
条件:
・氏名・住所・病院名など、個人が特定できる情報は入力しません。自分が把握しやすいように、イニシャル等で表記します。
・整理の根拠とした通知・Q&Aの名称を必ず示してください。
・最後に、支援経過に残す文案を1つ作ってください。
状況:
(例)20日に居宅訪問によるモニタリングを予定していたが、19日に利用者が入院した。25日に病院の相談員と家族へ電話し、状況を確認した。
出力をそのまま記録に使ってはいけません。根拠として挙がった通知を自分で開いて確認し、自分の保険者の要項・取扱いで裏取りをしてから、支援経過に落とします。AIがやるのは整理まで。判断と裏取りは自分の仕事です。
まとめ|運営指導2回・ケアプラン点検1回、指摘はゼロでした
最後に実録の答え合わせを。僕はこの運用のまま、運営指導を2回、ケアプラン点検を1回受けています。減算はありません。特段の事情について確認されたこともありません。
この記事の要点です。
- 国が決めているのは「特段の事情」の定義だけ。利用者側の事情に限られ、ケアマネ都合は含まれない。具体的な内容の記録が条件
- 減算するかどうかの判定権は保険者にある。申請制の保険者と記録制の保険者に割れている
- 入院1ヶ月目は、電話で把握できることを把握して、特段の事情としてモニタリングの結果を記録する
- 丸1ヶ月サービス利用のない月は、給付管理票を作成できないため居宅介護支援費は請求できない。2ヶ月目の主役は、2週間ごとの経過確認と事業所の枠への配慮
- 福祉用具貸与がある人は、退院日が分かった時点でモニタリングの日を決める
- 自分の保険者の運用は「市の名前+モニタリング+特段の事情」で検索し、不明なら文書に残る形で確認する
なお、看取り期にもこの「特段の事情」が登場します。死亡前後の実際の動き方は、こちらにまとめています。
▶ 在宅看取り、ケアマネは何をする?|余命1週間の連絡から、お看取り後の終結まで
出典:
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)|e-Gov法令検索(第13条第14号)
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(老企第22号)新旧対照表|厚生労働省(ページ内検索:特段の事情)
令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省(告示・留意事項通知の掲載ページ)