「ケアマネ、もう辞めたいかも」
疲れがたまってくると、ふとそんな言葉が頭に浮かぶことはありませんか。
実は僕、ケアマネという仕事を辞めたいと思ったことは一度もありません。でも「この職場を辞めたい」と本気で思ったことなら、あります。そして実際に、辞めました。
この2つ、似ているようでまったく別物です。
「ケアマネを辞めたい」のか、「今の職場を辞めたい」のか。ここを切り分けられるかどうかで、そのあとの選択肢は大きく変わります。
この記事では、僕が「職場を辞めたい」と思った実体験と、そこからどう動いたかを正直に話します。いま消耗しているあなたが、自分の「辞めたい」の正体を見つけるヒントになれば嬉しいです。
「ケアマネ辞めたい」には2種類ある
「ケアマネを辞めたい」と検索しているあなたに、最初に聞きたいことがあります。
あなたが辞めたいのは、本当に「ケアマネという仕事」ですか?
僕は、辞めたい気持ちには2種類あると思っています。
ひとつは、ケアマネという仕事そのものが合わないケース。ケアプランを考えること、多職種との調整、利用者さんやご家族との関わり。この仕事の中身自体にやりがいを感じられないなら、それは「仕事を変える」ことを考えるサインかもしれません。
もうひとつは、仕事は嫌いじゃないのに、職場や環境に消耗しているケース。残業の多さ、書類の山、職場の人間関係、筋の通らない方針。この場合、辞めるべきなのはケアマネではなく「その職場」です。
厄介なのは、消耗しているときほど、この2つの区別がつかなくなることです。疲れ切った頭では「もう全部イヤだ」としか感じられなくなる。それで「ケアマネ辞めたい」と検索してしまう。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいんです。
もし明日から、人間関係のストレスがなく、筋の通った方針で働ける職場に移れるとしたら。それでもケアマネを辞めたいですか?
「それなら続けられるかも」と少しでも思ったなら、あなたが辞めたいのは仕事じゃなくて、環境の方です。
僕自身がまさにそうでした。ここからは、僕が「この職場を辞めたい」と思った実体験を話します。
僕が「この職場を辞めたい」と思った日のこと
当時の僕は、ある事業所で管理者としてケアマネをしていました。ケアマネの経験年数も、それなりに積んできた頃です。
自分なりのケアマネ観が固まってきて、判断には理屈を通せるようになっていた。仕事は充実していたし、ケアマネという仕事を嫌いだと思ったことは一度もありませんでした。
それでも、「この職場を辞めたい」と本気で思う出来事が起きました。
理由を聞いたら、大声が返ってきた
ある日、地域包括支援センターから新規の相談がありました。
当時ケアマネは僕と同僚のAさんの2人。どちらも利用者の枠には余裕があり、業務が回らない状況でもありませんでした。
僕の方針は「まず受けると返答して、そのあとスケジュールを考える」。余裕があるなら、困っている人を待たせる理由はないからです。
でもAさんは「急ぎの案件かどうかを先に聞いてほしい」と言う。
僕はその理由を尋ねました。純粋に、なぜその確認が先に必要なのかを知りたかったからです。
返ってきたのは、理由ではなく大声でした。
「なんでそれくらいのことが聞けないの!?」
理屈で話したかったのに、感情がぶつけられて、会話が終わった。この瞬間のことは、いまでもはっきり覚えています。
正直に記録したら、責められた
決定的だったのは、別の出来事です。
担当していた利用者さんのご家族から、「自宅ではなく、外の落ち着いて話せる場所で相談したい」とお願いされたことがありました。
公共の場で介護の話をすることになるので、僕は事前にリスクを説明し、それでも構わないという同意をご家族から得たうえで、相談の場を設けました。そして、そのやり取りを支援経過に正直に記録しました。
数日後、上司に呼ばれました。
Aさんが僕の支援経過を見て、「個人情報の取り扱いがなってないのでは」と上司に報告したそうです。上司からは「そういうことは事務所でやってほしい」と言われました。
僕は事情を説明しました。ご家族の自宅から事務所までは距離があること。相談内容とその後の展開を考えると、事務所での面談を待っていたら支援がずっと先になってしまうこと。ご家族の同意も取っていること。
その理由が、考慮されることはありませんでした。
辞めたかったのは「仕事」じゃなく「正しさが通らない場所」だった
このとき僕がしんどかったのは、業務量でも、責任の重さでもありません。
筋を通して、利用者さんのために動いて、正直に記録した。その結果が「責められる」だったことです。
理屈よりも、声の大きさや報告の仕方で物事が決まっていく。そういう場所では、どれだけ丁寧に仕事をしても報われません。
「ああ、僕が辞めたいのはケアマネじゃない。この職場なんだ」
そう気づいたのが、この頃でした。
見切りをつけてから、1ヶ月で辞めた
「この職場を辞めたい」とはっきり自覚してから、僕が実際に辞めるまでは、1ヶ月ほどでした。
早いと思われるかもしれません。でも、僕の中では順序が明確だったんです。
辞めたい対象が「ケアマネという仕事」なら、慎重になるべきです。キャリアの方向転換だから、時間をかけて考えたほうがいい。
でも辞めたい対象が「職場」なら、話は別です。仕事は好きで、自分の力も落ちていない。合わないのは環境だけ。それなら、環境を変えるのが一番シンプルな解決策です。
正直に言うと、「もう少し我慢すれば変わるかも」という気持ちが湧かなかったわけではありません。でも、理屈が通らない場所は、僕ひとりが我慢したところで変わらない。それはあの2つの出来事で、十分わかっていました。
我慢は美徳ではありません。消耗しながら待ち続けた時間は、返ってきません。
見切りをつけるのは、逃げではなく判断です。
僕がどう考えて転職という選択をしたのか、その一部始終は別の記事に正直に書いています。「職場を変える」が頭をよぎっている方は、参考にしてみてください。
ちなみに、辞めると決めたあとに待っている最後の仕事が、担当の引き継ぎです。僕は退職の2ヶ月前のモニタリングで自分の口から伝えて、翌月に後任と同行する「2ヶ月前ルール」で送り出していました。円満な引き継ぎは、去る側のキャリアの資産になります。
▶ ケアマネの引き継ぎ手順|転職2ヶ月で35件引き継いだ僕が「書類より大切」と思うこと
辞めたのは職場だけ。ケアマネは辞めなかった
職場を離れた僕は、その後もケアマネを続けました。そして今は独立して、一人で居宅介護支援事業所を運営しています。
あのとき「ケアマネを辞める」という選択をしていたら、いまの働き方はありません。辞める対象を間違えなくて、本当に良かったと思っています。
「職場を辞めたい」に気づいたあなたには、大きく3つの選択肢があります。
選択肢①:職場を変える(転職)
一番わかりやすい選択肢です。ケアマネの職場は、居宅・施設・併設型など形態もさまざまで、同じ「居宅のケアマネ」でも職場の空気はまったく違います。
僕自身、複数の職場形態を経験しましたが、環境が変わるだけで仕事のしやすさは驚くほど変わりました。それぞれの職場のリアルな違いは「訪問介護併設・訪問看護併設・独立、ケアマネ3つの職場で気づいたこと」に詳しく書いています。
選択肢②:働き方ごと変える(独立)
「どの職場に行っても、結局は誰かの方針に従うことになる」と感じるなら、独立という道もあります。
自分の判断でケアプランをつくり、自分の理屈で仕事を回す。責任はすべて自分に返ってきますが、あの「正しさが通らないストレス」からは解放されます。僕はこの道を選びました。
選択肢③:今の職場で、線の引き方を変える
すぐに動けない事情がある方は、今の職場のまま「自分の消耗を減らす工夫」から始める手もあります。引き受ける業務の線引きを見直す、記録や業務のムダを削る。環境そのものは変わらなくても、削られ方は変えられます。
その「線引き」でいちばん判断に迷うのが、利用者や家族からの理不尽な要求です。どこからが我慢しなくていいラインなのかは、この記事にまとめました。
▶ ケアマネのカスハラ、どこから我慢しなくていい?カッターを突きつけられた僕が「線引きと報告」の話をします
ただし、これはあくまで応急処置です。職場の構造そのものが理不尽なら、いずれ①か②を考えるタイミングが来ると思います。
この「業務のムダを削る」を具体的にどうやるかは、残業をテーマにした記事で詳しく書いています。
▶ ケアマネの残業は平均月4時間?——統計と体感が違う理由と、独立して残業が消えた僕の話
独立という選択肢が気になった方は、何が必要になるのかを先に知っておいてください。僕が独立までにぶつかったことを、一つひとつ整理した記事があります。
まとめ:辞めたい気持ちの「正体」を見極めよう
「ケアマネを辞めたい」と検索したあなたに、最後にもう一度だけ聞きます。
あなたが辞めたいのは、ケアマネという仕事ですか? それとも、今の職場ですか?
僕はケアマネという仕事を辞めたいと思ったことは一度もありません。でも職場を辞めたいと思ったことはあるし、実際に辞めました。そして、それは間違いじゃなかったと今でも思っています。
辞めたい気持ちは、あなたが真剣に働いてきた証拠です。手を抜いて働いている人は、消耗すらしません。
だからこそ、辞める対象を間違えないでください。仕事そのものが合わないなら、キャリアを考え直せばいい。職場が合わないだけなら、環境を変えればいい。あなたのケアマネとしての力は、どこにいっても消えません。
環境を変えるという選択肢が見えてきた方へ。僕の転職の実体験はこちらです。
自分の理屈で働きたいと思った方へ。独立までの道のりはこちらにまとめています。