初回加算は、300単位です。僕の地域単価(10.42円)だと、1件3,126円になります。
金額だけ見れば小さい加算です。ただ、この加算で検索する人の多くは、金額を知りたいわけではないはずです。「このケースで取れるのか」を知りたくて調べている。事業所が変わった利用者、入院をはさんで再開した利用者、要介護から要支援になった利用者——初回加算は、要件そのものより「自分のこのケースが要件に当てはまるか」で迷う加算だからです。
僕は関東で一人の居宅介護支援事業所をやっています。純新規、要支援から要介護への変更、2区分変更、入院2ヶ月後の再開まで、初回加算のパターンはひととおり経験してきました。そして、取れそうなものは調べて、全部算定してきました。
この記事では、算定できる3パターンの要件と根拠、迷いやすいグレーゾーンの整理、そして「迷ったときにどう調べるか」まで紹介します。
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結論|初回加算は300単位。取れるものは、調べて全部取る
まず数字から整理します。
- 初回加算:300単位/月(居宅介護支援・介護予防支援とも同じ)
- 僕の地域単価10.42円で計算すると:300単位×10.42円=3,126円
- 算定できるのは、利用者1人につき「初回」にあたる月の1回
要介護1・2の方なら、基本報酬1,086単位に300単位が乗って、初月は1,386単位。10.42円換算で14,442円です。ふだんの月より3,000円ちょっと多い。それだけといえば、それだけです。
ただ、新規の受け入れには、契約、アセスメント、初回のケアプラン作成、サービス担当者会議の段取りと、通常月にはない手間がまとまって発生します。初回加算はその手間への評価です。だから僕のスタンスははっきりしていて、要件に当てはまるなら遠慮なく算定する。当てはまるか迷ったら、調べてから決める。「よくわからないから算定しない」で終わらせない。これだけは徹底してきました。
迷いやすいのは要件の読み方です。次の章から、順番に整理します。
算定できるのは3パターン|告示の要件と「新規」の定義
初回加算が算定できるのは、次の3パターンのどれかに当てはまり、居宅サービス計画を作成した場合です。
- 新規に居宅サービス計画を作成する場合
- 要支援者が要介護認定を受けた場合
- 要介護状態区分が2区分以上変更された場合(例:要介護1→要介護3)
加えて、運営基準減算に該当している場合は算定できません。ここは前提条件です。

迷いが生まれるのは、1つ目の「新規」の読み方です。厚労省のQ&Aに、定義がはっきり書かれています。
「新規」=契約の有無に関わらず、その利用者について過去2ヶ月以上、その事業所で居宅介護支援を提供しておらず、居宅介護支援費が算定されていない場合。
ポイントは2つあります。1つは「契約の有無に関わらず」。契約書を交わした日ではなく、給付管理をして報酬請求をする月が基準になります。契約だけ先に済ませて、実際のサービス調整と請求が翌月になったら、初回加算はその翌月です。もう1つは「過去2ヶ月」という具体的な期間。ここが、後で書く入院ケースの判断軸になります。

3つ目の「2区分以上変更」は、区分変更申請の結果として出会うパターンです。区分変更を出すか出さないかの判断は、別の記事に書いています。
▶区分変更、出す?出さない?ケアマネの判断基準|「申請するか」と「プランを動かすか」は別の話
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(告示・留意事項通知の掲載ページ)
グレーゾーンQ&A|「このケースで取れる?」を厚労省Q&Aと実務で整理する
ここからが本題です。初回加算で本当に迷うのは、教科書どおりでないケースのほうです。厚労省のQ&Aと、僕が実際に算定してきたときの整理を並べます。
Q. 利用者が事業所を変えたら、新しい事業所は算定できる?
できます。初回加算の判定は「事業所」単位だからです。
厚労省のQ&Aに、転居等で事業所が変更になった場合は「事業所としては初めてその利用者を担当するので、算定可能」という回答があります。前の事業所で何年ケアマネジメントを受けていた方でも、あなたの事業所にとって初めての利用者なら、アセスメントもプランもゼロから作ります。その手間への評価なので、筋も通っています。
Q. 同じ事業所の中で、担当ケアマネが交代したら?
これは取れません。担当者が変わっても、事業所としてはその利用者を担当し続けているからです。Q&Aでも、委託先の事業所内の変更では算定できないという整理が示されています。判定の単位は、あくまで人ではなく事業所です。
Q. 入院で2ヶ月以上空いて、再開したら?
僕はこのパターンを経験して、算定しました。整理はこうです。
さっきの「新規」の定義に戻ると、過去2ヶ月以上、居宅介護支援を提供しておらず、算定されていないことが基準でした。長期入院中は給付管理が止まり、居宅介護支援費の請求もありません。2ヶ月以上それが続いてから在宅へ戻れば、定義のうえでは「新規」に当てはまります。退院後はアセスメントからやり直すのが実務でもあるので、手間の実態とも一致します。
ただし、注意書きがひとつ。Q&Aには「契約が実質的に継続するようなケースは、形式的な空白期間を置いても算定できない」という回答もあります。算定したいがために意図的に間を空けるのは通らない、ということです。入院はこちらの都合で作った空白ではないので僕は別物と整理していますが、月をまたぐ微妙なケースは、請求前に保険者へ確認しておくと安心です。
入院のケースには、もうひとつ加算の判断があります。入院した時点で病院へ情報提供すると算定できる、入院時情報連携加算です。土日入院・月またぎのグレーゾーンは、この記事と同じ「このケースで取れる?」の形で整理しました。
▶入院時情報連携加算、このケースで取れる?|土日入院・月またぎのグレーゾーンと、算定を見送るとき
Q. 要介護から要支援になったら?
このパターンは、土俵が変わります。要支援の方のケアプランは介護予防支援になるので、初回加算も介護予防支援側の話になります。単位数は同じ300単位です。従前ケアプランを作っていた居宅の事業所が、包括から委託を受けて新規に介護予防サービス計画を作る場合も算定可能、というQ&Aが出ています。

なお、逆方向の「要支援→要介護」は、前の章の3パターンの2つ目そのものなので、迷わず算定できます。
出典:厚生労働省「(適用要件一覧)介護予防支援費」(ページ内検索:初回加算)※事業所変更・新規の定義のQ&Aは居宅介護支援費と共通の扱いであることが同資料に明記されています
包括委託の新規は、合計するとひと月で約10,000円になる
要支援の方を包括からの委託で新しく受けるとき、初月に動く単位を全部足すと、こうなります。
- 介護予防支援の基本報酬:442単位
- 初回加算:300単位
- 委託連携加算:300単位(委託を開始した月に、利用者1人につき1回)
合計1,042単位。10.42円換算で約10,900円です。僕の実感としても、包括委託の新規+総合事業のケースは、初月でおよそ10,000円という感覚です。
ここで、建付けをひとつ正確に書いておきます。このうち委託連携加算は、委託元の包括(指定介護予防支援事業所)が算定する加算です。委託を受けた居宅の側が自分のレセプトで請求するものではありません。そのかわり国は、この加算を算定した包括に対して「加算分を勘案した委託費の設定」を求めています。つまり僕らの側には、レセプトではなく委託費として入ってくる想定の加算です。委託費の設定は包括との契約によるので、金額の実際は地域や契約で差が出ます。
ちなみに、要支援の方のプランは委託だけでなく、居宅が介護予防支援の指定を自分で取って直接受けるルートもあります。その場合の基本報酬は472単位で、請求も自分の事業所名義です。指定を取るかどうかの判断は、こちらにまとめています。
▶介護予防支援の指定、居宅は取るべき?制度開始から2年回した僕の結論
経営数字として見ると、初回加算は「新規を受ける体力」になる
1件3,126円。この数字を、一人居宅の経営数字として置き直してみます。
僕のところの新規は、ならすと月1件ほどです。仮に年12件なら、初回加算だけで300単位×12件=3,600単位、10.42円換算で年37,500円ほど。処遇改善加算が月8,929円だったのと比べても、年間で見れば同じくらいの規模感があります。小さい加算を「小さいから」と落とし続けると、一人事業所ではじわじわ効いてくる金額です。
そしてもうひとつ。初回加算が乗る月は、契約・アセスメント・初回プラン・担当者会議と、実際に一番手間がかかっている月です。手間に評価がついている以上、受け取らない理由がありません。逆に言えば、初回加算を正しく拾えているかは、新規を受け続ける体力に直結します。加算を経営数字として読む見方は、処遇改善加算の記事で実際のレセプトを使って書きました。
▶ケアマネの処遇改善加算はいくら?一人居宅の僕は月8,929円|2.1%の計算をレセプトで確認した
迷ったときの調べ方|AIに調べさせて、一次情報で裏を取る
ここまで読んでも、現場のケースは教科書どおりに来ません。「入院をはさんで、その間に区分も変わって、事業所も変わった」のような複合ケースは、この記事のQ&Aにも載っていません。
そういうとき、僕はAIに最初のリサーチをさせています。ただし、AIの答えをそのまま信じて請求はしません。使っているのは、根拠の提示と裏取りをセットで要求するやり方です。どのAIでも使える形にすると、こうなります。
以下のケースについて、居宅介護支援の初回加算が算定できるかを調べてください。
【ケース】
(ここに状況をそのまま書く。例:要支援2の利用者が入院し、2ヶ月半後に退院。要介護2になって、同じ事業所で担当を再開する)
【条件】
・結論だけでなく、根拠となる告示・通知・Q&Aの名称と該当箇所(問番号など)を必ず挙げてください
・根拠が見つからない場合は、推測で埋めず「見つからない」と答えてください
・最後に、原文を確認するための検索キーワードを提示してください
ポイントは【条件】の3行です。根拠の名称と問番号まで出させると、答えが合っているかを自分で原文に当たって確認できます。逆に、根拠を出せない答えは採用しない。この前提を最初から組み込んでおくのが安全です。
流れとしては、AIの回答→挙がった資料名で厚労省の原文を検索→該当箇所を自分の目で読む→それでも割れたら保険者に確認、の順です。AIは「どの資料を見ればいいか」を一気に絞ってくれる道具で、最後の確定は一次情報と保険者。この順番さえ守れば、調べる時間はかなり短くなります。
まとめ|初回加算は、要件を知っていれば迷わない加算
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 初回加算は300単位。10.42円の地域なら1件3,126円
- 算定できるのは3パターン:新規/要支援→要介護/2区分以上の変更(+運営基準減算に該当しないこと)
- 「新規」の定義は、過去2ヶ月以上その事業所で提供・算定がないこと。契約日ではなく請求の実態で判定する
- 事業所が変われば算定できる。事業所内の担当交代では算定できない。判定の単位は事業所
- 入院で2ヶ月以上空いた再開は「新規」の定義に当てはまる。ただし意図的な空白は不可。微妙なら保険者確認
- 包括委託の新規は、基本報酬+初回加算+委託連携加算で初月およそ10,000円。委託連携加算は包括が算定し、委託費に反映される建付け
- 複合ケースはAIに根拠つきでリサーチさせて、原文と保険者で確定する
初回加算は、金額の小ささのわりに、判断の場面が多い加算です。でも、要件と「新規」の定義さえ手元にあれば、ほとんどのケースは自分で答えを出せます。取れるものを調べて取る。それは請求テクニックの話ではなくて、新規の受け入れにかかった手間を、制度が用意したとおりに評価してもらうだけの話です。