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家族からのクレームにどこまで応じるか|ケアマネが線を引くときの説明トーク実例

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家族からのクレームを受けた日は、帰り道の運転中もずっと頭の中で相手の声が再生されます。自分の何がまずかったのか、次に会うときはどんな顔で会えばいいのか。あの映像は、経験した人にしかわからないと思います。

僕は独立3年目の主任ケアマネで、要介護35件前後(要支援も含めると約60人)を一人で担当しています。この記事では、家族からのクレームを受けたときの初動、どこまで応じてどこで線を引くかの判断、そして実際に僕が使った説明の言葉を、実例ベースで話します。

先に僕の実数字を出しておきます。独立してからの3年間で、記憶にあるクレームは1件です。勤めていたころは4〜5件ありました。担当件数はどちらも55〜60人前後で、ほぼ変わっていません。

同じ人間が、同じ件数を持って、クレームだけが減った。クレーム対応が上手くなったからではありません。理由は記事の後半で話しますが、まずは「受けた瞬間にどう動くか」からです。今まさに頭を抱えている方は、そこから読んでください。

クレームが来た瞬間の初動——謝る場所を間違えない

クレームの電話や訪問先での剣幕に直面したとき、僕が最初にやることは決まっています。謝ることと、記録することです。ただし、この2つには型があります。

謝るのは「自分の非」ではなく「相手の不快」

僕はまず「すみません」から入ります。事実確認の前でもです。

こう書くと「非を認めたことにならないか」と心配になるかもしれません。ならないと僕は考えています。この時点で謝っているのは、自分のミスに対してではなく、相手が不快な思いをしている状態に対してだからです。公的なサービスであっても、相手はお客様だと僕は思っています。目の前の人が不快になっている以上、まずそこに頭を下げる。そのうえで、説明することは説明します。

逆に言えば、ケアマネの責務にないことまで謝る必要はありません。僕は独立後に一度だけ、利用者さんから強い調子で叱られたことがあります。介護保険の外の制度について「介護も福祉も近しいものなんだから、把握しているのが普通だろう」と言われました。不快にさせたことには謝りました。でも「把握しているのが普通」という部分には謝っていません。介護保険のルールのどこにも、保険外の制度まで責任を持って答えるとは書いていないからです。方法の紹介まではする。責任を持った回答は専門の窓口へつなぐ。そこは謝罪ではなく、説明で返しました。

このときの経緯と、再発を防ぐために契約の日にしている説明は、こちらの記事に全部書いています。

ケアマネの契約で何を説明する?必ず口頭で話す5項目と「2時間」の中身【独立3年目の実録】

記録は「相手の言葉のまま、記憶が薄れないうちに」

クレームを受けている最中は、相手も感情的ですし、こちらも多少は気が動転します。だからこそ、支援経過には相手の発言をできるだけ正確に、言葉のまま残すようにしています。要約でまとめると、あとで「そんな言い方はしていない」の水掛け論になったとき、記録が守ってくれません。書くのは記憶が薄れないうち。その日のうちです。

最近は、電話であれば話を聞きながらそのまま打ち込みます。運転中などでメモが取れない状況なら、その旨を伝えて録音させてもらいます。日程などを口頭で確認したあとは、必ずLINEなどの形に残るもので送り直します。

地味な作業ですよね。でも、この記録の習慣があるおかげで、僕のところでは「言った・言わない」で揉めるクレーム自体が起きていません。次の章で話しますが、クレームにはこの習慣で消せる種類があるんです。

クレームには「消せるもの」と「消せないもの」がある

家族からのクレームを僕なりに分けると、4つの種類になります。そして重要なのは、この4つが横並びではないということです。仕組みと経験で消せるものが2つ、どうやっても消えないものが2つあります。

クレームの4類型を「仕組みと経験で消せる(事実誤認・説明不足)」と「消えない(制度の限界への不満・業務範囲を超えた要求)」に分けた対比図

消せる2つ:事実誤認と、説明不足

ひとつ目は事実誤認です。「勝手に回数を減らされた」「ケアマネがこう言った」といった、事実の食い違いから始まるクレーム。ふたつ目は説明不足です。利用料の変わり方、サービスが始まる時期、キャンセル料。先に言っておけば防げたのに、伝えそびれたことから起きる不満です。

正直に書きます。この2種類は、僕の場合、独立してからは起きていません。

事実誤認が起きないのは、前の章で書いた記録の習慣があるからです。相手の言葉のまま残す、口頭の約束は必ず形にして送り直す。これを続けていると、食い違いようがなくなります。

説明不足のほうは、正直に言えば新人のころにはありました。独り立ちした直後、新規の初回訪問を終えて上司に報告すると、「それは確認したのか」「それも聞いていないのか」と足りない点を次々に指摘されました。そのたびに頭を下げて、確認し直しに行っていました。あのころは、契約や説明のやり方をマニュアル化して直したわけではありません。指摘されて、抜けを埋めて、また次でやる。その繰り返しで、聞き漏らしが自然に減っていっただけです。

つまりこの2つは、時間と場数で消えていく種類のクレームです。今まさに事実誤認や説明不足でクレームを受けている方に伝えたいのは、それはあなたの人格の問題ではなく、記録の習慣と経験の量で埋まる穴だということです。

消えない2つ:制度の限界と、業務範囲の外の要求

問題はこちらです。3つ目は制度の限界への不満。4つ目はケアマネの業務範囲を超えた要求。この2つは、どれだけ経験を積んでも消えません。ケアマネ個人の力量ではなく、介護保険という制度の形そのものから生まれる不満だからです。

だからここから先は「どうすれば起きないか」ではなく、起きたときにどう線を引くかの話になります。

どこまで応じ、どこで線を引くか

制度の限界には、代わりの道を出しながら説明する

制度で応えられないことを説明するとき、僕は「できません」で終わらせないようにしています。できない理由と、代わりに使える道を、セットで出します。実際によく出てくる場面を3つ挙げます。

福祉用具が使えないとき。要支援や要介護1の方だと、ベッドや車いすは原則として貸与の対象外です。「本人が困っているのに、なぜ借りられないのか」と言われます。このとき僕は、状態によっては例外的に給付が認められる仕組みがあることを説明します。門前払いにはしません。

同居家族がいて生活援助が入らないとき。「息子は日中仕事でいないのに、なぜ掃除に来てもらえないのか」。僕はこう説明しています。

「ご家族にも仕事のお休みはありますよね。その日に買い物や掃除をされると思うので、そのときに一緒に買っていただくことができる、と国は考えているんだと思います」

そのうえで、「ご家族が休む時間がほしい」という話であれば、訪問介護ではなくショートステイの利用を提案します。訪問介護で家族の休息を作ろうとするから制度とぶつかるのであって、目的が休息ならサービスの種類が違うからです。

正直に書きますが、この説明でその場で納得してもらえるわけではありません。相手が感情的になっているのであればそれは説明をして納得させるではなく、傾聴、受け止めることが仕事になります。

ショートステイの空きがないとき。本人に認知症があり、家族が疲れきっていて、それでも受け入れ先が見つからない。「早く探してほしい」と言われます。これはもう、制度の限界というより地域の資源の限界です。探し続けるしかない場面もあります。

ケアマネの責務は「助けること」ではなく「説明すること」

ここが僕の考えの中心にあります。

今の制度で対応できないことを、自分の身を削って助けてあげるのがケアマネの責務ではありません。今の制度ではここまでしかできない、としっかり説明することが責務です。

制度の外に出て助けてしまうと、その場は感謝されます。でも、次も同じことを期待されます。そして自分が倒れます。「あのケアマネはやってくれたのに」が地域に積み重なると、後から来るケアマネがもっと苦しみます。線を引くのは冷たさではなく、続けるための条件だと思っています。

この線引きが必要になる相手は、家族だけではありません。生活保護を受けている方を担当していると、本人や役所から介護保険の外の手続きを頼まれることがあります。何を引き受けて何を断り、断ったあとに誰へ渡しているかは、1本の記事にしました。

生活保護の利用者、ケアマネはどこまでやるのか|引き受けたこと・断ったこと・断ったあとに渡した先

業務範囲の外の要求に線を引いた実例

勤めていたころの話です。認知症のあるご本人を、奥さんが主に介護されている世帯を担当していました。訪問のたびに、奥さんが介護の苦労を話されます。最初の1〜2か月は、1時間ほど聞いていました。

愚痴を聞くこと自体は、悪いことではないと思っています。ただ、毎回1時間が続くと、その時間のあいだ僕は本来の仕事ができません。ある月の訪問で、いつものように1時間ほど話を聞いたあと、帰りぎわにこう伝えました。

「ケアマネの関わり方として心苦しいところではあるんですが、お母さんの気持ちや苦労をずっとお聞きすることができかねます。介護の悩みや苦労があったときに、僕らケアマネは介護サービスを提案する記録をしなくちゃいけなくて、だからといってずっとお話を聞くわけにもいかないんです。だから、お話をお聞きするのは30分くらいにさせてほしいんです」

言い方のポイントは3つあります。ひとつ、心苦しいという気持ちを先に伝えること。ふたつ、なぜ聞き続けられないのかを、ケアマネの仕事の中身で説明すること。「忙しいので」ではなく「サービスを提案して記録する仕事があるので」です。みっつ、ゼロにはしないこと。30分は聞きます。

それと、切り出すタイミングです。僕は初回では言いませんでした。2か月ほど様子を見て、3か月目の訪問で、その日の1時間を聞き終えてから伝えました。話の途中で遮って線を引くと、話の内容そのものを否定されたと受け取られます。聞くだけ聞いてから、次回以降の約束として伝える。この順番が大事だと思っています。

結果を先に言うと、この世帯は地域包括支援センターを通してケアマネ交代になりました。

交代になっても、それは失敗ではない

線を引くと、担当を外れることがあります。僕自身、これまでにケアマネ交代になった経験が何度かあります。

先に書いておくと、僕のほうから「この方の担当は続けられません」と申し出たことは、3年間で一度だけです。それ以外はすべて、相手から離れていった形でした。できること・できないことをはっきり示すと、相手が思っていたケアマネ像と違ったのだと思います。そして、こちらに言わないまま交代の話が進みます。

交代の申し出がどういう経路で伝わってくるのか、知ったあとに何をしているのか、そして僕が自分から手放した一度の話は、こちらの記事にまとめました。

ケアマネの担当変更、申し出は直接来ない|包括から電話が来たときの動き方と、引き留めない理由

交代になったとき、僕は残念だとは思います。でも、悔しいとか、こちらの言い分をわかってもらえなかった、とは思いません。単純に相性が合わなかっただけだと考えています。

まったく同じ対応をしても、とても感謝してくださる方がいます。同じ僕、同じ説明でそうなる。だとしたら、これは正しさの問題ではありません。

評判のいいお医者さんでも、自分に合わなければ黙って病院を変えますよね。評判を聞いて行ったラーメン屋が口に合わなければ、次から別の店に行きます。そのとき、わざわざ「あなたのラーメンは私の口に合わないので、もう来ません」とは言いません。それと同じことが起きているだけです。

クレームを受けて担当を外れると、自分がケアマネに向いていないような気がしてきます。僕もそう感じた時期がありました。でも、線を引いた結果として離れられたのなら、それは仕事として間違えていません。ここを混ぜないほうがいいです。

クレームが減った理由と、一人事業所の守り方

数字が変わったのは、断り方を変えたからではない

冒頭に書いた実数字に戻ります。勤めていたころは4〜5件、独立後の3年で1件。担当件数は変わっていません。

この理由を、僕はまだ完全には言葉にできていません。今のところの見立てとしては、こういうことだと思っています。

「ケアマネはここまでが仕事で、ここから先は違う」という考え方が、僕の話し方や接し方、姿勢に出ているのだと思います。そして、それを感じ取った地域包括支援センターの方が、肌感覚で「この利用者さんならこのケアマネが合いそうだ」と選んでくれているのではないか。つまり、僕が上手くさばいているのではなく、入口の段階で相性の合う方が来ている。そういう仮説です。

断言はできません。ただ、もしこれが当たっているなら、線を引くことは目の前の1件を守るだけでなく、この先に出会う人の組み合わせまで変えていることになります。

一人でやるなら、契約書と重要事項説明書に条項を入れておく

独立すると、上司という盾がなくなります。勤めていたころは、職場によって差がありました。相談すれば案件ごとに指示をくれて、自分で判断していい範囲まで渡してくれた事業所もあれば、相談したら圧を感じそうだと想像がついて言い出せなかった職場もあります。

一人になると、その差すら消えます。だから僕は、契約書と重要事項説明書に、ハラスメントへの対応とサービス提供を断る場合の条項を入れています。紙に書いてあるかどうかで、いざというときの動きやすさがまったく違います。まだ入れていない方は、ここから手をつけるのがいちばん早いです。

そして、様子がおかしいと感じたときは、深刻になる前に本人やご家族と話をしておきます。関係が壊れきってからでは、話し合いそのものが成立しません。

暴言や威圧、身の危険を感じるレベルの場面については、線引きの基準と報告の手順を別の記事にまとめています。

ケアマネのカスハラ、どこから我慢しなくていい?カッターを突きつけられた僕が「線引きと報告」の話をします

まとめ:線を引くことは、冷たさではない

この記事で話したことを整理します。

  • 謝るのは自分の非ではなく、相手の不快に対して。責務にないことまで謝らない
  • 記録は相手の言葉のまま、その日のうちに。口頭の約束は形にして送り直す
  • 事実誤認と説明不足は、記録の習慣と場数で消える種類のクレーム
  • 制度の限界と業務範囲外の要求は消えない。線を引いて説明するしかない
  • できない理由と、代わりに使える道をセットで出す
  • ケアマネの責務は、身を削って助けることではなく、ここまでだと説明すること
  • 交代になっても失敗ではない。相性が合わなかっただけ
  • 一人でやるなら、契約書と重要事項説明書に条項を入れておく

クレームを受けた日は、自分のやり方が全部間違っていたような気持ちになります。でも、線を引いたことで起きたクレームなら、それは仕事として正しいことをした結果です。

担当を持ちはじめたばかりで、電話が鳴るたびに身構えてしまうという方は、こちらの記事も読んでみてください。

新人ケアマネが「何もわからない」のは当たり前|着信音に怯えていた僕が教える最初のひと月の型

それでも消耗が止まらないとき、原因が自分ではなく職場の側にあることもあります。僕自身、辞めたかったのはケアマネという仕事ではなく、当時の職場でした。

職場を変えるだけで、クレームの起き方も、相談できる相手の有無も変わります。今すぐ転職しないとしても、他の事業所の条件を知っておくと「今の職場が普通なのかどうか」の基準ができます。

※レバウェル介護の対応エリアは北海道・宮城・東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・静岡・大阪・京都・奈良・兵庫・広島・福岡です(派遣はエリア内からの応募のみ対象)。

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