2026年6月から、ケアマネにも介護職員等処遇改善加算がつくようになりました。加算率は2.1%。制度が始まったことは知っていても、「で、実際いくら入るのか」は、調べてもなかなか実物の数字が出てきません。
僕は一人で居宅介護支援事業所をやっているケアマネです。3月末に届出をして、6月分のレセプトから加算を算定しています。処遇改善計画書ベースの見込額は、月8,929円・年89,290円でした。
この記事では、2.1%が何にどう掛かるのか、レセプトの実物で何がわかったのか、「思ったより少ない」と感じたときに疑うポイントはどこか——届出から算定まで自分でやった数字で説明します。
結論:一人居宅の処遇改善加算は月8,929円(計画書の見込額)
先に結論です。僕の事業所の処遇改善加算は、処遇改善計画書の見込額で次のとおりです。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 1ヶ月の見込額 | 8,929円 |
| 年間の見込額 | 89,290円(10ヶ月分) |
| もとになる単位数 | 居宅介護支援 37,081単位/月+介護予防支援(指定分)3,697単位/月 |
| 担当件数の目安 | 要介護35件前後(要支援も含めると約60人) |
年間が12ヶ月分でないのは、加算の算定が2026年6月開始で、今年度は6月から翌3月までの10ヶ月分だからです。
この8,929円がどうやって出てくるのか。計算は3ステップです。
2.1%は何に掛かるのか|計算は3ステップ
処遇改善加算の計算は、仕組みだけ見ればシンプルです。
- ステップ1:1ヶ月の総単位数を出す(基本報酬+各種加算・減算。処遇改善加算そのものは含めません)
- ステップ2:2.1%を掛ける(これが処遇改善加算の単位数になります)
- ステップ3:地域単価を掛けて円に直す

具体例です。要介護1・2の利用者1件、基本報酬1,086単位で計算すると——
- 1,086単位 × 2.1% = 22.8単位 → 四捨五入で23単位
- 23単位 × 10.42円(地域単価。あとで詳しく説明します)= 約240円/月
利用者一人あたり、月240円ほど。これが件数分積み上がって、月8,929円になります。
ここで、つまずきやすいポイントが2つあります。「四捨五入はどの段階でやるのか」と「1単位は何円なのか」。前者は次の章でレセプトの実物を、後者はその次の章で説明します。
レセプトで確認した|加算は利用者1件ごとに四捨五入
僕は最初、「1ヶ月の総単位数に2.1%を掛けて、最後に1回だけ端数を丸める」のだと思っていました。ところが6月分のレセプトを確認すると、違いました。
加算は「居宅支援処遇改善加算」(サービスコード436191)という行で、利用者1件ごとにレセプトに載ります。端数処理も1件ごとです。要介護1・2の利用者なら、1,086単位×2.1%=22.8単位を四捨五入して23単位。担当している利用者の人数分、この加算の行が1行ずつ印字されるイメージです。
実物のレセプトは利用者の情報が入っているため、画像では載せられません。同じ構成の再現図を作りました。

要介護3以上(基本報酬1,411単位)なら、計算上は1,411単位×2.1%=29.6単位→30単位です。要介護3以上の利用者が多い事業所ほど、加算も少し厚くなります。
なお、加算がついても利用者負担は発生しません。居宅介護支援費はもともと全額が保険給付(利用者負担なし)のサービスなので、加算分も同じ扱いです。利用者やご家族から「ケアマネさんの請求が増えるの?」と聞かれたら、そう説明できます。
「思ったより少ない」の正体は3つある
月8,929円という数字を見て、「2.1%と聞いたわりに少ない」と感じた方へ。少なく見える理由は、だいたい次の3つに分解できます。
①1単位は10円とは限らない(地域単価)
単位を円に直すときの単価は、地域区分で変わります。居宅介護支援の場合、1単位10.00円〜11.40円。僕の事業所の地域は6級地で、10.42円です。都市部との差は数%ですが、加算のような小さい単位数では、この差が金額に現れます。
②件数の中身|要介護1・2は1件あたり月240円ほど
前の章のとおり、要介護1・2の利用者1件で23単位=約240円です。担当件数が多くても、要介護1・2が中心の構成なら、積み上がる金額はゆるやかです。逆に言えば、この加算は「件数×介護度の構成」がそのまま出る仕組みです。
③包括から委託された予防プランには乗らない
勘違いしやすい部分なので整理します。介護予防支援のプランのうち、自分の事業所で指定を取って請求している分には加算が乗ります。一方、地域包括支援センターから委託を受けている分は、自分のレセプトには乗りません。委託分の処遇改善加算は、委託元の包括が算定する建付けになっているからです(厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」)。
僕の事業所でいうと、委託で受けているのは総合事業のみを使っている方のプラン(介護予防ケアマネジメント)です。予防の指定を取っていない事業所なら、要支援の方の予防プランも包括からの委託なので、同じく自分のレセプトには乗りません。
包括が算定した加算分を委託料に上乗せするかどうかは、委託元との取り決め次第です。委託の予防プランを多く受けている事業所は、ここで「思ったより少ない」が起こりやすくなります。
予防の指定を自分で取るかどうかの判断は、別の記事で詳しく書いています。
▶ 介護予防支援の指定、居宅は取るべき?制度開始から2年回した僕の結論
処遇改善加算は、年収というより「月の上乗せ」の話です。ケアマネの年収そのものの数字は、こちらでまとめています。
▶ 主任ケアマネの年収はいくら?数字がバラバラな理由と、雇われ・独立の両方を経験した僕の実額
雇われケアマネの場合|入金と手取りの間に「分配」がある
ここまでは一人居宅の話でした。雇われている場合、仕組みがひとつ増えます。
処遇改善加算は、ケアマネ個人に直接支払われるお金ではありません。事業所の介護報酬に上乗せされて、事業者(法人・会社)の口座に入金されます。そこから賃金改善として職員に配られる——この「分配」が、入金と手取りの間に挟まっています。
事業所には、加算で受け取った額以上の賃金改善を行う義務があります。処遇改善計画書を出し、年度が終われば実績報告も提出します。ただし、誰にいくら配るかは事業所の計画次第です。全員一律とは限りませんし、月々の手当ではなく一時金でまとめて支払う形もあり得ます。
自分の給与明細のどの項目に乗っているのか、いつから乗るのか。わからなければ、確認していい話です。加算は事業所が受け取るものですが、原資になっているのは、ケアマネの仕事が生んだ単位数です。
もし、配分の説明を求めても要領を得ない答えしか返ってこない職場だったら——処遇の話は、職場を見直すきっかけのひとつになることもあります。僕が転職を決めたときの考え方は、この記事に書いています。
取得の実際|3月末の届出と「令和8年度特例要件」
取得の手続きも、実際にやった流れで書いておきます。提出したのは3点セットです。
- 介護職員等処遇改善計画書
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書(体制届)
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
提出先は指定権者(市町村など)で、僕は3月末に電子申請で提出しました。届出期限は自治体の案内で示されるので、これから届け出る場合は、必ず指定権者のページで確認してください。
算定要件は、次のどちらかを満たせば算定できます。
- ①処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件:キャリアパス要件Ⅰ(任用の要件や賃金体系を整備して周知する)、キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施など資質向上の取組)、職場環境等要件(職場環境をよくする取組を、決められた区分ごとに1つ以上行う)の3つを満たす
- ②令和8年度特例要件:生産性向上の取組を行う。居宅介護支援の場合はケアプランデータ連携システムの利用が該当し、届出の時点では「利用する」という誓約で算定に入れる運用でした
うちの事業所は②の特例要件で届出をしています。①の体制を一から整えるより、データ連携システムの利用を誓約するほうが、うちの規模には現実的でした。
制度の一次資料は、厚労省の改定ページにまとまっています。計画書の様式や事務処理手順の通知も、ここから辿れます。
国の加算だけじゃない|県や市の独自補助があった地域も
実は、国の処遇改善加算が始まる前から、ケアマネの処遇改善を独自に補助していた自治体があります。僕の地域にも、県の補助金と市の補助金がありました。市の補助金は、ケアマネ1人あたり月額で定額を上乗せする仕組みです。
ただし、この流れは今、国の加算に一本化されつつあります。僕の市の補助金は、国の加算にケアマネが含まれることを理由に、加算開始と入れ替わりで終了する案内が出ていました。自治体の独自補助は「国の制度ができるまでのつなぎ」だった、という解釈です。
それでも、自治体によっては別の形の補助が残っていたり、新しく始まったりします。お住まいの県や市のサイトで「介護支援専門員 処遇改善 補助金」と検索してみる価値はあります。事業所経由で申請するものが多いので、見つけたら管理者や事務の方に共有するところまでがセットです。
まとめ|初回入金は8月下旬。実額はこの記事に追記します
最後に、この記事の要点です。
- ケアマネの処遇改善加算は2026年6月開始・加算率2.1%
- 計算は「総単位数×2.1%×地域単価」の3ステップ。ただしレセプト上は利用者1件ごとに四捨五入
- 一人居宅の僕の見込額は月8,929円・年89,290円(10ヶ月分)
- 少なく見える理由は、地域単価・介護度の構成・委託予防が乗らないこと、の3つ
- 雇われの場合は「事業者への入金→分配」を挟む。配分は事業所の計画次第なので、給与明細で確認する
8,929円は、あくまで計画書の見込額です。初回の入金は8月下旬の予定なので、実際に振り込まれた金額を確認したら、この記事に実額を追記します。制度の解説は世の中にたくさんありますが、届出から入金まで実物の数字を追いかけた記録として、この記事を育てていきます。